顧客情報:土地持ち資産家、お住まい:首都圏、資産額:約7億円
提供サービス:共有地解消、底地・借地の整理、不動産売却による資産の組み替え
円滑な財産承継を目指すうえで、課題となりがちなのが「共有地」の取り扱いです。きょうだいがいるご家族では、親から譲り受けた土地を共同で所有するケースが見られます。しかし、生前に遺恨があったり、土地にかかる納税資金が高額だったりする場合、後々に揉めることが多いのです。
今回、ご紹介するのは、首都圏にお住まいで共有地の取り扱いに悩んでいらっしゃるA様の事例です。"負の遺産"となってしまった共有地の問題をどのように解決したのでしょうか。
課題 | きょうだいで所有する共有地をめぐって揉めている 所有する不動産の収益性が低い |
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提案 | 共有地解消 底地・借地の整理 不動産売却による資産の組み替え |
親から相続した土地をめぐり、きょうだい仲が悪化
「親から相続した土地に関して、きょうだいで揉めているんです......」
そう相談にいらっしゃったのは、4人きょうだいの長女・A様です。10年ほど前にご両親が相次いで亡くなり、不動産を4人の共有で相続しました。それぞれに分配しなかった理由は、「きょうだい全員、平等に財産を残してあげたい」というご両親の遺言書でした。それが皮肉にも、後々きょうだいで揉める大元となってしまったのです。
このような例は実は少なくありません。A様のご両親と同じ思いからや、相続までに分配比率を決められず、「とりあえず平等にしておこう」と急いで決めてしまったケースなどです。もちろん、何の問題もなく共有財産として所有しているご家族もいらっしゃいます。ただ、きょうだいの数が3人以上にもなると、揉めてしまうケースは非常に多いです。
現金なら等分にすることも難しくはないのですが、不動産となるとそう単純にはいきません。そしてもともと折り合いが悪いきょうだいでしたら、なおさらうまくいきません。
リターンを得られないのに、納税負担ばかり重い
今回の場合、長女であるA様の持ち分が多かったのですが、それゆえに固定資産税などの納税通知はすべてA様に届いていました。きょうだい仲がすでに悪化していたため、納税負担を話し合うことはできず、A様がすベて支払っていたと言います。
「税金は私が負担しているにもかかわらず、駐車場として運用していた土地は他のきょうだいの自宅敷地内にあったため、その収入はすべてそちらが受け取っていました。正直、納税負担だけ重い不動産なんていらないです」(A様)
確かに、多くの不動産をお持ちでしたが、収益性が低く、うまく運用できているとは言い難い状況でした。しかし、売却しようにも話し合いにならず、遺産分割協議も何度か行いましたが、まとまることはありませんでした。
客観的データできょうだいを説得し、共有地を解消
そこで、当社が入らせていただき、以下をご提案しました。
- 共有地解消
- 底地・借地の整理
- 不動産売却による資産の組み替え
まずは現状分析をして、財産の状況を整理。その際、遺産分割にあたって必要な書類をすべて出していただき、きょうだいの持ち分をチャートにしています。そのうえで、依頼主であるA様のデメリットを排除する策を用意しました。それが、少しずつご自分の持ち分を他のきょうだいに贈与していくという方法です。
そして、きょうだい全員とお会いし、下記のどちらかを選んでいただきました。
- 1.今のままの持ち分でいる(1/4)
- 2.A様の持ち分を譲り受けて自身の分を増やす(1/3)
A様の持ち分を譲り受ける2の場合、その不動産をきょうだい全員で一緒に売却して収益を得ることもできると説明しました。
結果、選ばれたのは2の贈与。2年かけてA様が他の3人へ贈与していくこととなりました。A様の財産はなくなったものの、毎年の固定資産税の納税負担から解放されたのです。
自分の持ち分を譲渡し、他のきょうだいから「底地」を購入
「子どもの代までこの負担が続くのかと、気に病んでいました。親から譲り受けた財産は無くなってしまいましたが、"負の遺産"がなくなってホッとしています」(A様)
肩の荷が下りたように仰る姿が印象的でした。ただ、それだけでは解決に至りませんでした。実はA様は一番下の弟から「自分の持っている土地を買ってくれ」と長年言われ続けていたのです。
跳ね除けることもできたかもしれませんが、これ以上きょうだい仲が拗れたり、自分の子の代まで影響が出たりすることは避けたいと、購入を決意されます。しかしその土地が問題でした。
"負の遺産"を円滑に整理し、資産の組み換えに成功
購入した土地は「底地」。つまり、借地権が設定されている土地で、とある会社が借地人として存在していました。これもまた"負の遺産"だったのです。
底地を時価相当額で売却することは、一般には難しいと言われます。私達は底地をよく、「カップとソーサー」における「ソーサー」として例えます。ソーサーだけを持っていてもあまり価値がないように、底地についても売却時には本来のものよりも価値が低下してしまうのです。
しかしA様は売却の方向で意思を固められていました。そこで当社が間に入り、借地人だった会社に底地を買い取っていただきました。
当社の場合、こうした底地や借地は先ず契約内容や、入居者の状況・人間関係を含めたこれまでの経緯を資料にまとめて可視化します。
その上で、契約一つ一つの状況に合わせて、適正な地代の算定から、次回の更新時の契約内容、借地人に対して底地を売却する又は、借地権を購入するといった検討できる選択肢を、お客様のご意向を元に財産全体を俯瞰した上で、助言しています。
また、売却されたくない場合は、固定資産税などの支出を再度検証して、価格が見合っていなければ地代について交渉する方針でアドバイスすることもあります。
底地を売却して得たお金で資産運用を開始
こうして底地を無事売却し、まとまった資金を手にすることができたA様。
「これまで納税負担ばかりでリターンがない状態だったのが、こうしてお金を得ることができるなんて信じられない気持ちです」と喜んでおられました。
売却で得た資金を、保険や別の不動産の購入費用に充てて、将来、自分の子どもたちに遺してあげられる財産を作りました。無事、"負の遺産"から生きた安定的な収入へと財産の組み換えをすることができたのです。
目指すゴールに向かうには「安全運転」が重要
今回の共有地の問題は、ご両親が亡くなった際、遺言書はあったものの、きょうだいで共有するという問題が生じやすい内容でした。しかしながら10ヶ月以内に財産の棚卸しや相続税の納税の準備を行わなければならず、時間に追われてしまったがために深く話し合いをせず、平等に財産を分けて相続してほしいというご両親の思いをそのまま反映させてしまった結果に起こった失敗でした。円滑な財産承継をするには、先々を見据えて、余裕を持った準備が必要です。
車の運転でもそうですが、目指すゴールがある場合、残り時間が少ないと、そこに向けてかなりのスピードを出さなくてはなりません。スピード超過は事故の元。やはり、安全に確実に進んでいくのがいいでしょう。相続は、「まだ先のこと」ではないのです。
財産コンサルティングの専門会社である当社は、財産承継に関わるたくさんの事例を持っています。今まさに揉めそうな火種がある方も、何をしたらいいのか決めかねている方も、財産の運用・管理、承継の観点からアドバイスさせていただきます。
- 相澤 光Aizawa Hikaru
- コンサルティング第二事業本部 第三事業部 副部長
不動産や法人を活用した財産防衛策の立案・実行に従事し、財産と想いを次世代に承継するための支援を提供。最適な選択肢を見つけられるよう、中立的な立場で家族全体の意向調整もサポートすることを信条とする。
当社の30年にわたるナレッジを集約した書籍を発行し、セミナー登壇実績も多数。
趣味:学び(税理士資格の勉強中)、ギター、サウナ
- 専門分野
- 土地持ち資産家、金融資産家向けコンサルティング
- 資格
- 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
- 著書
- 「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策