2024.12.04
事業承継
自社株評価を行う意義とは?評価する必要性や方法、注意点について解説
非上場会社の株式は上場会社の株式と異なり、客観性のある価格がありません。そのため非上場会社の株式の価格はわかりにくく、場合によっては相続税を納税する際に思っていたよりも多くの額が課される可能性もあります。

非上場株式の保有者や将来的に相続する可能性のある人は、相続税の発生を念頭に置き、自社株の評価を行っておくことが重要です。そこでこちらの記事では、自社株評価の基本的な概要や必要性、評価のプロセス、評価額が高くなる・低くなる要因、評価を行う際の注意点について解説します。


自社株の評価とは?

会社の経営者にとって、自社株を評価することは大きな意味を持ちます。まずは、自社株評価についての基本的な概要や、自社株評価を実施する必要性などについて確認していきましょう。


自社株評価の概要

自社株評価とは、市場に出回っていない非上場会社の株式の価値を算定することです。上場会社の株式は東京証券取引所などの取引所で売買され、取引の中で株価が決まります。

しかし、非上場会社の株式には、上場会社のように証券取引所での市場価格がありません。そのため、国税庁が定める基準などを用いて、株式価値を評価することになります。

自社株評価を行う必要性

株式を相続すると、相続税が発生します。株式を上場していない会社は経営者が多くの株式を保有しているケースが多いですが、経営者の死亡などで後継者が株式を相続した場合に、相続税を納めるのは後継者です。

業績が好調で多くの利益を確保している会社や総資産額の大きい会社の場合、自社株の評価額が高くなる傾向があり、評価額が高ければ相続税の額も大きくなります。このような場合、自社株の価値を知っていないと相続税が発生した際に資金がなく、納税できないという状況に陥ってしまうかもしれません。そうならないためにも、自社株の評価を行うことはリスク管理として非常に大切と言えます。


取引相場のない自社株評価のプロセス

上場会社の株式と異なり、非上場会社の株式の価格には明確な指標が設けられていません。そのような非上場会社の株式は、誰がどの程度の株式を保有しているのか、どれくらいの規模の会社なのかなどによって評価の仕方が変わります。では、非上場会社の自社株評価のプロセスについて見ていきましょう。


1.株主の判定を実施

評価を判定する対象の会社にその会社を支配できる同族株主がいるかどうかで、株式の評価方法は異なります。そのため、自社株評価を実施する際は、まずは同族株主とそれ以外の株主を分ける株主の判定から始めます。

同族株主とは、株主の1人とその同族関係者が保有する議決権割合が30%以上の場合における、その株主および同族関係者です。ただし、議決権割合が50%超の同族関係者グループが存在するのであれば、そのグループが同族株主という扱いになりますので、その他に30%以上を保有しているグループがあったとしても、こちらは同族株主とはなりません。なお、同族関係者とは、6親等内の血族や配偶者、3親等内の姻族といった親族、これらの親族と生計を一にしている人(=一緒に暮らしている人など)などが該当します。

株主が同族株主の場合には、適用される判定方法は基本的に「原則的評価方式」です。一方、少数株主や役員ではない議決権割合が5%未満の同族株主などであれば、「特例的評価方式 (配当還元方式)」で算定されることになります。 

2.会社規模の判定を実施

評価対象の会社が同族株主グループに該当することが判明したら、次に会社の規模の判定を実施します。原則的評価方式にも複数の評価方法があり、会社の規模に応じて採用する評価方法が変わるのがその理由です。会社規模によって「大会社」「中会社」「小会社」の3種類の区分があり、それぞれに評価方法が定められています。会社規模は、従業員数が70名以上であれば大会社になり、70人未満であれば 業種、総資産、従業員数、取引金額によって中会社と小会社に分けられます。

3.特定会社かどうかの判定を実施

対象の会社が、特定会社に当てはまるかを判定するプロセスです。特定会社とは以下のように、特定の資産を多く保有している会社や、経営状況が特別な状態にある会社などを言います。

◎株式等保有特定会社
会社の総資産に占める株式等の割合が50%以上の会社。

◎土地保有特定会社
総資産に占める土地等の割合が多い会社。割合は、会社の規模によって70%または90%。

◎その他
開業から3年未満の会社や、開業前・休業中の会社、清算中の会社など。


特定会社に該当する場合は、純資産価額方式で算定します。特定会社に該当しない場合は、純資産価額方式あるいは純資産価額方式と類似業種比準価額方式の併用のうちで価格が低い方を適用します。

評価方法の種類

非上場会社の株式の評価方法は、まず「原則的評価方式」と「特例的評価方式」の2つに大きく分類されます。原則的評価方式はさらに「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」に分けられ、会社の業種や規模によって評価の方法が変わる仕組みです。特例的評価方式は配当還元方式とも呼ばれ、同族株主以外はこの配当還元方式を用いて算出します。こちらでは、各方式の概要について解説していきます。

類似業種比準方式

原則的評価方法の1つで、評価対象会社の事業内容が類似する上場会社の株価を参考にする評価方法です。自社の「配当金」「利益」「純資産価額」の3つの要素について自社と上場会社の数字を比較して比準価額を算出し、さらに会社規模に応じた斟酌割合を加味して価値を算出します。算出に際して株式市場の数値を参考にできるため、客観性のある評価方法と言われています。

純資産価額方式

純資産価額方式とは、「評価対象の会社が解散した場合、株主にどれくらいの金額が戻ってくるのか」というアプローチの計算方式です。貸借対照表に記載されている資産と負債を参考に、その資産と負債の価額を相続税を計算するときの時価に置き換えます。そして、評価した総資産の価額から負債や評価差額(相続税評価額による純資産評価額−帳簿価額による純資産の合計額)に対する法人税等相当額(37%)を差し引きして算出します。

配当還元方式

配当還元方式とは、配当金をもとに株価を算出する方法です。同族株主がいる会社で、少数株主の株式を評価する際に多く用いられます。過去2年間の配当額の平均を10%で割り戻し、元本の株価を逆算するという方式で、会社の資産全体ではなく配当金のみにフォーカスした算定方式のため、基本的に他の評価方法で計算した場合より評価額が低くなる傾向があります。

自社株の価額が決まる理由

株式の価値は、それぞれの会社の事情や評価の方式によって高くなったり低くなったりするものです。こちらでは、自社株の価額が決まる理由や要因について解説していきます。

自社株評価が高くなる要因

上場会社の株式は市場での売買によって価格が決まりますが、非上場株式の価格は国税庁が定めた基準で算出します。そのため、実際よりも高く評価されることも少なくありません。

自社株の評価にあたり、業績が好調で内部留保が厚い会社は評価額が高くなりやすい傾向があります。上場会社よりも非上場会社は一般的に信用性が低いと考えられており、金融機関などからの融資などが受けにくくなる場合も少なくありません。そうした点から内部留保を多くして安定した会社経営を行うと、自社株の評価は高くなります。

また、会社名義の有価証券や不動産の価値が高い場合、自社で資産価値が高い設備を保有している場合なども、自社株の評価は高くなりやすいという特徴があります。

自社株評価が低くなる要因

条件によっては、自社株の評価が低くなることもあります。たとえば、純資産価額方式で算出する場合、会社の純資産額が多い場合は評価額が高くなりますが、反対に純資産額が少なければ評価は低くなる可能性が高いでしょう。

また、類似業種比準価額方式では、同じ事業内容の上場会社の利益や配当金額、純資産を比較して株価を算出します。社会的に景気が良い時期であれば、比較対象となる上場会社の業績も良くなることが考えられ、それにつられて自社株の評価も高くなるでしょう。その反面、景気が悪くなれば上場会社の業績も低下する可能性が高まり、利益や配当金などは縮小することが予想されます。このように、状況に応じて自社株の評価が低くなることもあるのです。

自社株評価の注意点

相続税の納税などを行う上で、自社株の価額を算出することは非常に重要です。自社株を評価するにあたって、あらかじめ把握しておくべき点、注意しておいた方がいい点がいくつかありますので、当事者になる可能性がある場合には参考にしてください。

類似業種比準価額で評価できないケースがある

会社によっては、類似業種比準価額が適用されないケースもあります。たとえば開業から3年に満たない会社、配当金・利益・純資産がゼロの会社は、類似業種比準の評価方式ではなく純資産価額にて算出することになります。また、債務超過のある会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社についても、適用される評価方法は純資産価額方式です。

類似業種比準価額が適用されない場合、株式評価額が引き上げられることがあります。自社で正確に自社株評価ができるかどうか心配であれば、相続や事業承継などに精通した専門家に評価を依頼するといいでしょう。

相続税の納付には期限がある

相続が発生したら、10ヶ月以内に相続税の申告と納付を完了させなければなりません。自分の親など親族から非上場株式を相続した場合、まず評価額を確認することになります。

ただ、自社株の評価は複雑で、正確に価格を算定するには多くの時間がかかる恐れがあるため注意が必要です。また、相続税は、納付を延滞したり、そもそも申告しなかったりすると追徴金を支払う義務が生じます。非上場株式の相続が予想されるのであれば、専門家に相談するなどして、早めに行動を起こしておくことが大切です。

まとめ

非上場株式は上場会社の株式と異なり、価格の評価は非常に複雑です。同族株主の有無や会社の規模、保有する資産のバランスなどによって、自社株の評価方式は変わります。自社株の価格を正確に導き出すためには、自社の状況に当てはまる方式で正しく判定しなければなりません。そのため、相続の当事者になる可能性がある場合は、自社株評価に対する知識を深めることが大切です。

ただ、自社株を正確に評価するのは非常に難解です。自分で対処するのが厳しいと感じるのであれば、プロに相談して進めるのが良いでしょう。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスでは、税理士、司法書士など、国家資格を有する専門家が150名以上在籍し、30年以上の豊富な実績に基づき、お客様のご希望に沿って、事業承継、財産の承継・運用・管理に関するさまざまなご提案をしております。お客様とその親族の方々にとって最良の結果になるようプランをご提案いたします。

 

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