TCFDへの賛同
青山財産ネットワークスグループは、2022年9月にTCFDの最終提言への支持を表明しました。
昨今、企業に対し気候変動への対応を求める社会の声は日々増加しており、事業展開においてサステナビリティを考慮していくことが求められます。
当社グループは、土地やその他天然資源等のエネルギーを利用した事業活動を行っており、気候変動への対応は事業継続に大きな影響を及ぼす重要な経営課題であると認識しております。また、不動産をはじめとする当事業活動にともない排出される温室効果ガスが気候変動に大きな影響を与えると考えており、主要なリスクだと捉えています。
そのため、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言へ賛同し、また環境に配慮した取り組みを資産価値の向上と社会的課題解決に貢献できるものと位置付け、お客様・テナント様のニーズに応えられるよう取り組んでまいります。
TCFDとは
- 2015年、G20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)により民間主導の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD;Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が設置されました。
- 2017年6月、TCFDは提言をまとめた最終報告書(TCFD提言)を公表し、本提言には、世界各国の金融・非金融企業、政府・国際機関・民間団体などが賛同(4,925:2023年11月24日)しています。
- 日本においても、TCFD研究会の開催、TCFDコンソーシアムの設立など活動が活発化しており、企業・機関の賛同数も年々増加しています。(1,488:2023年11月24日時点)
出典:経済産業省「気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD)」
TCFD開示
TCFD提言に沿った情報開示は、一般にTCFD開示と呼ばれています。TCFD開示では、気候変動に係るリスクおよび収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、以下の4項目を開示推奨項目としています。
開示推奨項目 |
概要 |
ガバナンス |
気候関連リスク・機会についての組織のガバナンス
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戦略 |
気候関連リスク・機会がもたらす事業・戦略、財務計画への実際の/潜在的影響(2℃、4℃シナリオ等に照らした分析を含む)
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リスク管理 |
気候関連リスクの識別・評価・管理方法
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指標と目標 |
気候関連リスク・機会を評価・管理する際の指標とその目標 |
出典:経済産業省「気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD)」
ガバナンス
サステナビリティ委員会
2022年2月、取締役会と連携する体制でサステナビリティ委員会を新設いたしました。
サステナビリティ委員会は、取締役会で決議する目標の進捗管理や評価などを目的として、持続可能な成長基盤の構築を目指すとともに、サステナビリティの方針や戦略、施策について監督・モニタリング機能を果たします。
メンバーは代表取締役及び常勤取締役で構成され、代表取締役社長が運営委員長を務めます。
組織体制
サステナビリティ委員会メンバー
2024年1月1日現在
委員長 |
代表取締役社長 |
委員
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取締役常務執行役員 コンサルティング統括本部長(サステナビリティ担当)
取締役常務執行役員 不動産事業本部長
取締役常務執行役員 コンサルティング事業担当 兼 NSS事業本部長
取締役常務執行役員 コーポレートファイナンス本部長
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TCFD推進分科会と取締役会の役割
TCFD推進はサステナビリティ委員会内の分科会として位置づけられ、分科会の活動内容はサステナビリティ委員会へ毎月報告され、サステナビリティ委員会より取締役会へ3か月に一度報告を実施しています。本年度は気候関連のリスク及び機会の評価、戦略策定ならびに温室効果ガスの排出量算出等に取り組んでおります。取締役会ではサステナビリティ委員会からの報告をもとにリスク管理方針の検討を行い、経営計画や戦略、施策の決定を行っています。
取締役会の役割 |
概要 |
監督モニタリング |
自社・連結子会社における温室効果ガス排出状況(ADVANTAGE CLUB運用物件を含む)の
モニタリング
TCFD関連施策の進捗状況の監督・モニタリング
TCFD推進分科会の活動の監督
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リスク管理方針の検討 |
気候関連リスク・機会がもたらす事業・戦略、財務計画への影響に関するシナリオ、
試算に関する報告を受け、リスクを低減する管理体制の構築、施策実行の判断
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経営戦略の策定 |
気候変動対策・温室効果ガス削減・廃棄物削減・脱炭素社会への対応に関連する
戦略の検討、実行の判断
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戦略
対象事業について
本検討では、「ADVANTAGE CLUB(アドバンテージクラブ、以下「AD」)」をシナリオ分析の対象といたしました。ADは2023年における総売上高比率約65%、CO₂総排出量比率約66%を占め、当社における代表的な商品であり、また主要なCO₂排出源となっております。
当社グループにおけるADを除いた事業について、不動産取引事業は仲介での取り扱いが大部分を占めること、財産コンサルティング事業はその源泉が人的資本であることから気候変動へ及ぼす影響、または気候変動から受ける影響が比較的小さいため今回は対象としておりません。
シナリオ分析の結果を将来的に経営戦略へと反映させ、今後一層環境に配慮した施策に取り組み、資産価値の向上と社会的課題解決に貢献し、お客様・テナント様のニーズに応えてまいります。
リスクと機会
不動産業界(不動産小口化商品)におけるバリューチェーン上のリスクと機会は以下のように推測します。
シナリオの選択
移行リスクは2030年時点での想定といたします。
物理的リスクは気温変化の予測差が大きくなる2050年時点での想定といたします。
参考パラメータ一覧
リスク別(移行リスク(2030年時点)、物理的リスク(2050年時点))、シナリオ別(2℃、4℃)にIEA、環境省等のデータに基づき想定しております。
サプライチェーンにおける世界観(4℃)の定義
4℃シナリオでは、低炭素経済への移行は進まず、物理的リスクが高まり対応が求められます。
サプライチェーンにおける世界観(2℃)の定義
2℃シナリオでは、低炭素経済への移行が進み、新たなニーズ・機会が生まれる一方で、物理的リスクの上昇は比較的抑えられます。
事業インパクト評価
想定した世界観に基づき、各リスクが財務(損益計算書)へ及ぼす影響について、下記を想定しております。
事業インパクトの試算
事業インパクト評価に基づき、シナリオ別に以下の項目について試算しております。
事業インパクトの試算(4℃シナリオ)
- 被災しなかった場合や、省エネ改修コスト増への対策が実施された場合、インパクトは下図より限定的になる見込みです
事業インパクトの試算(2℃シナリオ)
- 炭素価格の本格導入により改修工事に伴い排出されたCO₂分の炭素価格が工費に加算され、コストが増加します
- 省エネ改修・カーボンフリー電力プラン・グリーンビル認証など、状況とニーズに応じた対応が必須となります
今後の対応について
いずれのシナリオにおいても組成規模の拡大により粗利は増加する中、成行きで事業を継続したとしても、気候変動リスクによるインパクトは粗利増加分を全損するまでの影響は見込んでおりません。
しかしながら外部環境の変化により数億規模の影響が出る可能性を想定しています。
いずれのシナリオにも対応できるよう、社内外関係者からのフィートバックを通じて、戦略のブラッシュアップ・経営戦略への反映をサステナビリティ委員会が中心となって実施してまいります。
引き続きADVANTAGE CLUBの安定した運用に努め、お客様の大切な資産を守ってまいります。
リスク管理
「100年財産コンサルティング」を掲げ、当世代だけでなく、次世代、次々世代のお客様のベストパートナーを目指す当社にとって、大切な財産を持続可能なより良い状態で承継・運用・管理をしていくにあたり、リスク管理はお客様にとってはもちろん、当社グループの企業活動にとっても重大な課題であると考えております。
当社グループ全体に関わる中長期的な視点での気候変動リスク・機会についてはサステナビリティ委員会が統括し、取締役会と連携する体制で監督・モニタリングを実施し、経営戦略への反映をおこなってまいります。サステナビリティ委員会の詳細につきましては「ガバナンス」をご参照ください。
また当社グループでは創業時より不動産ソリューションサービスを提供しており、都心部の高価な不動産を取り扱っております。個別案件ごとにおけるリスク管理のために「不動産プロジェクト諮問会議」、「コンプライアンス委員会」を以前より設置しており、所定の条件を満たす案件に関して気候変動リスク・機会を含めたリスク管理を個別に実施しています。
指標と目標
CO₂排出量の実績
当社グループにおけるCO₂総排出量の実績は以下の通りです。
※1 |
Scope3における現在の集計カテゴリーは「1.購入した製品・サービス」、「6,出張」、「7.雇用者の通勤」、「13.リース資産(下流)」、「15.投資」です。 |
※2 |
期中に管理不動産の増加・減少が発生するため、月ごとの総延べ床面積をそれぞれ算出し、その平均値を年間における総延べ床面積として使用しています。 |
※ 集計期間は当社の決算期に合わせ、毎年1月1日から12月31日です。
※ 国内事業の総計となります。海外事業につきましては影響が軽微なため算定の対象外としています。
※ 環境省・経済産業省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」に基づき算定しています。
※ 使用している排出係数は全て調整後排出係数となります。
ADVANTAGE CLUBの運用規模拡大、社員数の増加等に伴い、CO₂総排出量は増加傾向にあります。
しかしながら、省エネルギー設備の導入や電力契約をカーボンフリープランへ変更することにより、m²あたりのCO₂排出量(CO₂排出量原単位)を削減しております。
将来に向けた削減目標について
2030年または2050年に向けた排出量削減目標につきましては現在検討中となります。
今後も排出量抑制の施策を継続・拡大し、気候変動リスクへの対応を行ってまいります。