2024.01.19
財産承継
不動産を相続するために必要な手続きとは?相続の基本的な流れや必要な書類、複数人で分割する方法などを解説
な流れや必要な書類、複数人で分割する方法などを解説 遺産の相続は、多くの人にとって関係のある事柄です。相続が発生すれば様々な手続きが必要になりますが、特に不動産の相続手続きは複雑です。実際に相続手続きを完了するまでには、時間も手間もかかります。
その中でスムーズな遺産相続を実現するためには、あらかじめ不動産相続についての理解を深めておく必要があります。

そこでこの記事では、不動産を相続する際の基本的な流れや、不動産相続の手続きにおいて必要な書類、不動産を含めた遺産を複数名で分割する方法、不動産相続のプロセスで注意すべきポイントなどについて解説していきます。 

 

不動産相続に必要な手続きの流れ

不動産の相続が発生すると、関係者との話し合いや書類の申請など様々な手続きを行うことになります。
手続きが完了するまでの期間は場合によって異なるものの、一般的には1〜3ヶ月程度が目安です。

では、具体的にどのような手続きが必要なのでしょうか。不動産相続に対する理解を深めるために、まずは基本的な手続きの流れについて見ていきましょう。

遺言書の確認

不動産の所有者(被相続人)が亡くなった場合、まず遺言書があるかどうか確認します。
遺言書が作成されていれば、基本的には遺言書に記載されている内容が優先され、相続の手続きは遺言書の通りに進むことになります。そのため、遺言書の確認は非常に重要です。

なお、遺言書が無い場合は、全ての相続人が集まって遺産分割協議を行います。

法定相続人の調査・確定

遺言書がなかった場合、財産は法定相続人(法律で決められた範囲の親族)が相続します。
法定相続人を確定するためには、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を取得して、親族関係となる人を全て洗い出すことになります。

新たな相続人の存在が発覚すると遺産分割協議の内容は無効になるため、協議が始まる前に全ての相続人を確定させることが重要です。

相続財産の確認(財産目録の作成)

相続人が確定したら相続財産を特定することになりますが、この作業は「財産目録の作成」とも呼ばれています。相続財産の総額は、不動産以外のものも含んだ遺産総額を算出したうえで計算することがポイントです。
預貯金や株式などの有価証券、不動産などプラスの財産はもちろん、借入金や住宅ローンなどの負債もマイナスの財産として相続の対象となります。

遺産分割協議を実施する

相続人と相続財産の確定後、相続人全員で遺産分割について話し合う遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は相続人全員が参加することが必須で、1人でも欠けていた状態での協議は無効となるので注意してください。

協議を行って遺産分割の内容が決定したら、誰がどの財産を相続するかを記載した遺産分割協議書を作成します。この書類には、相続人全員による実印での署名捺印が必須です。

相続登記の申請

不動産の相続人が決まったら、所有者の名義変更の手続きを行います。この手続きは一般的に相続登記と呼ばれており、申請先は法務局です。
相続登記の手続きには、登記事項証明書や住民票など各種書類を揃えなければなりません。

なお、相続登記の手続きを放置すると過料(罰金)が科される可能性があります。

相続税の申告・納付

不動産相続の最後の手続きとして、相続税の申告・納付を行います。
期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」と決まっており、期限内に申告・納付ができなかった場合には延滞税がかかるなどのペナルティが発生するので、しっかり期限を把握しておくことが重要です。

不動産の相続手続きに必要な費用

不動産の相続手続きは、単に必要な書類を申請して済むわけではありません。
土地の名義を変更する際に発生する税金や、必要書類を取得するための取得費用など、様々な費用も支払うことになります。

こちらでは、不動産の相続手続きに必要な具体的な費用について説明します。

登録免許税

登録免許税は、相続登記(土地の名義変更)の際に申告・納付する税金です。

登録免許税の金額は、【相続登記をする不動産の固定資産税評価額×0.4%】という計算式で算出することが可能です。
なお、この登録免許税は法務局に支払います。

必要書類の取得費用

相続の手続きには、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書、登記簿謄本といった書類の提出が求められます。
相続方法によって必要な書類は変わりますが、書類の取得にかかる費用は合計で数千円〜1万円程度が目安です。

不動産の相続手続きに必要な書類

相続によって不動産を取得するプロセスでは、提出することが必要な書類が数多くあります。
ただ、相続には「遺言」「遺産分割協議」「法定相続」の3つのケースがあり、それぞれ必要な書類は異なります。

それでは、3つのケースで必要な書類について見ていきましょう。

遺言による相続の場合

 必要書類 取得場所 
 遺言書  ―
 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
 本籍地の市町村役場
 不動産を相続する人の戸籍謄本
 本籍地の市町村役場
 被相続人の住民票(除票)
 住所地の市町村役場
 不動産を取得する人の住民票
 住所地の市町村役場
 固定資産評価証明書
 都税事務所または市町村役場
 登記申請書
 法務局のホームページからダウンロード可
 不動産の登記簿謄本
 法務局

遺産分割協議による相続の場合

 必要書類  取得場所 
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本  本籍地の市町村役場
 相続人全員の戸籍謄本  本籍地の市町村役場
 被相続人の住民票の除票または戸籍の附表  住所地の市町村役場
 不動産を取得する相続人の住民票  住所地の市町村役場
 相続人全員の印鑑証明書  住所地の市町村役場
 相続関係説明書  申請者が作成
 固定資産評価証明書  都税事務所または市町村役場
  登記申請書
 法務局のホームページからダウンロード可
 不動産の登記簿謄本  法務局

法定相続による相続の場合

必要書類  取得場所 
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本  本籍地の市町村役場
 相続人全員の戸籍謄本  本籍地の市町村役場
 被相続人の住民票の除票または戸籍の附表  住所地の市町村役場
 不動産を取得する相続人の住民票  住所地の市町村役場
 相続人全員の印鑑証明書  住所地の市町村役場
 相続関係説明書  申請者が作成
 固定資産評価証明書  都税事務所または市町村役場
 登記申請書
 法務局のホームページからダウンロード可
 不動産の登記簿謄本  法務局

相続する不動産の分け方

複数人で遺産を相続する場合、現金などと同様に不動産も分割して相続することが可能です。
状況に応じて「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」と4つの方法があります。

それぞれどのような分割方法なのか、特徴や適用されるケースなどについて解説していきます。

現物分割

現金や株式などの遺産を、相続人がそのまま相続する方法が現物分割です。
不動産に関しては、2人の相続人が1つの土地を2つに分けて相続するケースや、相続する不動産が2つの場合に相続人が1つずつ相続するケースなどが当てはまります。

代償分割

代償分割とは、不動産など分割するのが困難な財産を特定の相続人が相続し、他の相続人に対して相続割合に相当する代償金を渡して解決する方法です。
相続人の中に不動産より現金を相続することを希望している人がいる場合に、採用されることがあります。

換価分割

不動産などの遺産を売却することで得た現金を、相続人の間で分割して相続するのが換価分割です。
換価分割は、全ての相続人が不動産の相続を望んでいない場合などで実施されます。

代償分割のように相続人同士での現金のやり取りが発生しないため、相続した土地の評価額の不公平感に関するトラブルは生じにくいと言えるでしょう。

共有分割

共有分割は、相続した不動産を分割することなく、複数の相続人が共有名義で相続する方法です。

共有名義にする場合は、それぞれの相続人が所有する割合を持分割合として設定して登記することになります。不動産は分割することが難しいため、相続人同士の協議ではどう分割するか決められない場合などに選ばれることがあります。
その一方で、売却や賃貸をする際には共有名義人の意見を一致させなくてはならない場合もあり、不動産の価値が棄損される可能性や、共有名義人に相続が発生すると更に共有者が増加するといった将来への不安も否定できません。

不動産の相続手続きで注意すべきポイント

不動産の相続手続きでは、多くの書類を提出することが求められます。また、現金などと異なり不動産はきれいに遺産分割しにくいため、相続人同士で要求や意見が対立することもあるでしょう。

ここでは不動産の相手続きで注意すべきポイントについて、代表的な例を取り上げて解説します。

自分で全ての書類を揃えるのは非常に手間

不動産の相続手続きでは、様々な書類を揃える必要があります。
住民票は住所地で取得できますが、戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で発行されるので、現住所と本籍地が遠い場合は移動に時間やお金がかかります。
また、不動産の登記簿謄本を取得するには、法務局まで出向かなくてはなりません。

このように書類を全て自分で揃えて申請すると、膨大な手間と労力がかかります。
書類の取得や作成は資格を持つ専門家に任せることも可能ですので、書類を揃えるための時間が取れないという場合は検討してもいいでしょう。

法律の知識が必要になる場面もある

遺言書がなければ、遺産分割協議を実施することになります。その結果は遺産分割協議書にまとめられますが、書き方や捺印などに不備があれば協議は無効になってしまいます。
また、相続登記の申請も複雑で、違反すると過料の対象となるため、手続きは慎重に進めなければなりません。

この他にも、不動産相続の手続きを行っていると、法律の知識が求められる場面に直面することも珍しくありません。
迅速かつ正確に手続きを進めるためには、相続問題に詳しいプロに書類作成などの作業を依頼するという選択肢もあります。

相続トラブルも考えられる

相続人が複数人いる場合、遺産分割協議で意見や要求が対立して、なかなか合意文書の作成に至らないリスクがあります。
また、取得された時期が古い不動産では、名義人の所在が不明というケースも考えられます。

相続人同士の関係が複雑で問題が長期化しそうな場合や、個人の力では対処できそうにない場合は、相続の当事者だけでは簡単に前に進みません。
このような状況になることが予想されているのであれば、遺産相続が発生した時点で相続関連の問題に精通した専門家に相談してみてください。
自分自身の負担は軽減され、手続きもスムーズに進むでしょう。

まとめ

遺産相続はプロセスが複雑であり、特に不動産相続の場合は遺産分割や相続登記の申請、相続税の申告などを行う必要があります。
また、遺言や遺産分割協議など相続のパターンによって、用意すべき書類や申請書の記入の仕方が変わってくることも、対応の難しさの要因の1つです。相続に関する知識や理解が乏しければ、相続人の間でトラブルが起こるかもしれません。

不動産の相続に自分で対応するとなると、相当な労力と時間がかかります。
そんなときに頼りになるのが、相続問題のプロフェッショナルです。アドバイスを求めたり、手続きを依頼したりしながら、スムーズな解決を目指しましょう。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスでは、税理士、司法書士など、国家資格を有する専門家が150名以上在籍し、30年以上の豊富な実績に基づき、お客様のご希望に沿って遺産相続や資産運用、管理に関するさまざまなご提案をしております。
お客様とその親族の方々にとって最良の結果になるようプランをご提案いたします。

\相続にまつわる相談・解決事例はこちら/

監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2023年10月時点のものです。

おすすめ記事はこちら