2024.04.04
財産運用
資産管理会社とは|役割や設立することのメリット・デメリットについて解説
資産運用に興味のある方や資産運用に取り組んでいる方は、「資産管理会社」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。実際、株式や不動産などの資産を多く所有する資産家の中には、資産管理会社を設立してさまざまなメリットを受けている人もいます。それでは、資産管理会社とはどのような会社で、どのような役割を担っているのでしょうか。こちらの記事では、資産管理会社の基本的な概要から設立するメリットとデメリット、資産管理会社を設立する方法、どのような人に向いているのかなどについて解説していきます。

資産管理会社とは



資産管理会社は法人の形式としては「株式会社」または「合同会社」の形態を取ることが多く、普通の会社との差はあまり感じられません。しかし実態としては、資産管理会社は個人によって自らの資産の管理を目的として設立されています。それでは、まず資産管理会社の概要や法人としての特徴などについて見ていきましょう。

資産管理会社の概要

資産管理会社は、自分が保有している資産を管理する法人(会社)です。株式や債券、不動産、自動車など各種財産の管理・運用が目的で、基本的に資産管理以外の事業を行うことはありません。設立者は、経営者および株主として資産管理会社の株式を保有します。会社が所有する株式などから生まれる配当金や不動産の賃料収入などが、主な収入源です。

また、自分自身の資産管理と運用のみを行う会社という点から、「プライベートカンパニー」とも呼ばれています。個人で資産を管理や運用する場合、所有する資産が多いほど手間が必要です。そのため、多くの資産を持つ資産家や企業経営者は資産管理会社を設立し、活用しています。

株式会社や合同会社との違い

資産管理会社は、形式的には「株式会社」や「合同会社」という形態を取ることが多いのが特徴です。では、株式会社と合同会社にはどのような違いがあるのでしょうか。

◎株式会社

株式会社は株主が資金を出資して設立され、株主総会で委任される経営者が事業を担います。「所有と経営の分離」が可能で、経営は株主総会で選任された役員(取締役)によって行われるため、役員は株主である必要はありません。取締役の任期は、非公開会社であれば最長で10年間です。重要事項は株主総会で決議され、議決権の数は原則として出資の比率により決まります。決算公告の必要があるのも株式会社の特徴です。会社法により、定時株主総会の開催後、貸借対照表などを公告することが義務付けられています。また、株式の増資による資金調達が可能です。

◎合同会社

合同会社の出資者(所有者)は社員と呼ばれます。所有と経営が一致する点が株式会社とは異なる点が、合同会社の特徴で、合同会社では出資をして社員にならなければ株主会社における役員になることはできません。なお、株式会社における代表取締役のような役割を担う、代表社員を置くことも可能です。
株式会社の役員には任期がありますが、合同会社の社員にはありません。同様に株式会社は決算公告をするという義務も、合同会社にはありません。さらに、設立時や増資時の費用を株式会社より抑えやすいのも、合同会社のメリットです。

資産管理会社を設立するメリット

多くの資産家や企業経営者が設立している資産管理会社。では、実際にどのようなメリットを享受できるのでしょうか。こちらでは、代表的なメリットについて解説していきます。

所得税ではなく法人税が適用される

自社株式や不動産などの資産について、個人が所有している場合と資産管理会社が所有している場合では、課税される税金の種類が異なります。個人の税の中でも、所得税は累進課税が適用されています。課税対象額が大きいほど税率が高くなる課税方法で、課税所得が4,000万円以上の場合の税率は45%です。

一方で中小法人の場合、法人所得に課税される法人税は、年間所得が800万円までが15%で800万円を超えると23.2%です(2024年3月時点)。たとえば年収1,000万円以上の会社員が収入をもとに投資用不動産を取得して賃料収入を得るのであれば、法人を設立した方が税率を低く抑えられる可能性が高いといえます。

所得を分散できる

資産管理会社に所属しているのが設立した人のみの場合、1人に所得が集中することになり、所得税の税率が高くなる可能性があります。そこで、配偶者や両親などの親族を役員として雇用し、会社から役員報酬を支給するという手法を取ることもできます。そうすると所得が分散され、所得税率の上昇を抑えられることがメリットです。

なお配偶者や両親などの親族を役員として雇用する際は、以下の点にご注意ください。
・役員としての職務執行を行っている必要がある
・役員報酬は適正額でないと損金算入されない

役員報酬は給与所得なので、他に給与を受けていない場合、親族は給与所得控除を利用できます。また、役員報酬は経費として計上できるので、法人税対策として採用されています。

相続の手続きが簡単になる

資産を持っている人が亡くなると、相続が発生します。ただ、遺産の大部分が不動産や自動車といった実物資産の場合、遺産分割が複雑になり、相続人同士の対立が生じやすくなります。しかし、資産を資産管理会社に集約して、資産管理会社の株式を相続人に分配すれば、相続が発生した際に「株式をどのように分割するのか」という考えで遺産分割を進めることが可能です。ただし、相続人同士で資産会社の株を持ち合うことになる点には注意が必要です。

資産管理会社を設立するデメリット

資産管理会社を設立すれば、税率を低く抑えられたり、経費として認められる範囲が広がったりと、多くのメリットがあります。その一方で、デメリットがあることも忘れてはいけません。

設立や維持に費用がかかる

会社の設立には、登録免許税や定款印紙代などの費用がかかります。費用は会社に形態によって異なり、合同会社の場合は10万円前後、株式会社では25万円前後と、金額としては決して少なくありません。
また、社会保険料の会社負担分の支払い、会計・税務の処理を依頼する税理士への報酬など、会社を維持するコストも毎年かかります。このように、会社の設立や維持にある程度の費用がかかることは、念頭に置いておいた方がいいでしょう。

簡単に廃業できない

個人事業主は、廃業届出書や事業廃止届出書などを提出すれば廃業でき、手続きは比較的容易です。一方で資産管理会社は、株主総会での解散決議や清算人選任、清算決了などの手続きが必要で、費用も生じます。さらに、会社が所有していた財産を個人、および株式会社なら株主、合同会社なら社員に移転する必要があります。中でも不動産は処分や登記など非常に手間がかかります。

会社保有の資産は個人で自由に使えない

資産管理会社の財産は会社の所有物であり、たとえ代表者であっても個人で自由に使うことはできません。また、資産管理会社が受け取った配当金などの現金を、個人的な交際費などに使うことも許されていません。自分の資産を管理する会社ではありますが、会社が保有する資金の扱いには注意が必要です。

資産管理会社を設立する方法・流れ



資産管理会社を設立するためには、社名や本社所在地といった基本事項を決めたり、関係機関へ申請をしたりと、さまざまな手続きを踏んでいく必要があります。こちらでは、資産管理会社を設立する方法や流れについて解説していきます。

会社の形態や基本事項を決める

会社の設立は、まずは会社の形態を決めるところからスタートします。資産管理会社の形態は、株式会社か合同会社のいずれかが一般的です。そして、会社の社名(商号)、事業目的、本店所在地、出資者、資本金の額、決算月などの内容を盛り込んだ定款を作成し、株式会社の場合は公証役場で認証を受けます。

資本金の払い込み

定款の作成が完了、または定款の認証を受けたら、会社の発起人もしくは社員名義の口座に出資金を払い込みます。なお、資本金1円から会社を設立することが可能です。

登記を申請する

会社の登記申請に必要な書類を揃えます。具体的には登記申請書や発起人の決定書、資本金の払い込みがあったことを証明する書面、印鑑届出書などの書類です。すべての書類を作成したら法務局へ提出します。

関係機関への届出を行う

登記申請書の提出から1~2週間で、資産管理会社の登記は完了します。その後、税務署等に法人設立・設置届出書や青色申告承認申請書等の書類を提出します。また、開業届は本店所在地の市区町村の役所への提出も必要です。

資産管理会社を活用すべき人

資産管理会社は、一般的には資産家が設立するものというイメージがあるかもしれません。しかし、現代では多くの収益を得る個人投資家や副業での収入がある会社員も珍しくなく、資産管理会社の恩恵が受けられる対象は増えています。それでは、資産管理会社を活用すべき人について具体的な例を挙げて見ていきましょう。

個人投資家

投資で一定以上の水準の収益を得ている個人投資家は、法人化のメリットを受けられる可能性が高いです。個人の所得税は収入によって 45%まで税率が引き上げられます。住民税も加えると最大で55%の税負担となるので、収益が多いほど自分の手元に残る額は少なくなってしまいます。一方で中小法人の法人税の税率は、所得が800万円までで15%、800万円を超えた分は23.2%と個人の所得税よりも低めの設定です。法人住民税を含めても税率は30%前後なので、所得が多いほど法人化は意味があります。

資産運用や副業を行っている会社員

資産運用や副業で収益を得ている会社員も、資産管理会社を活用するのも一つの方法です。個人投資家と同様、個人の所得税と法人税の税率の差を利用でき、法人にすることで経費として処理できる範囲も広がります。さらに、親族への役員報酬で所得を分散することも可能です。こうしたことから、資産管理会社を設立することでより多くのお金を手元に残せる可能性があります。

将来的に相続税の発生が見込まれる資産家

親族から財産を相続すると、相続税がかかります。また、生前に財産を贈与した場合には、相続税ではなく贈与税が課税されます。控除や特例が適用される場合もありますが、相続税も贈与税も税率は最大で55%と非常に高くなる可能性がある点を理解しておきましょう。
そこで大いに役立つのが資産管理会社の存在です。資産管理会社に親族を役員として雇用し、役員報酬を支払うことで徐々に財産を移転できる可能性があります。

資産管理に関する相談先



「自分の資産管理会社が欲しい」と思っても、会社設立や税に関する専門的な知識が必要です。自分で手続きをするのは現実的ではありません。では、資産管理に関する疑問は誰に相談すればいいのでしょうか。

司法書士

司法書士は、登記申請や定款作成など会社を設立するために必要なすべての手続きを代行してくれます。司法書士が役所や法務局などへ出向き、手続きをしてくれるため、手間を軽減できるでしょう。ただ、司法書士の業務は登記に関わることがメインとなるので、税金や許認可などの相談は受けられない点には注意してください。

税理士

会社の設立だけでなく、税務に関するサポートも必要であれば税理士が適任。税金の計算や税務申告を自分で行うのが不安な場合、税金に関する取り組みをしたいという場合などは、自社との顧問契約を前提に税理士に会社の設立から支援してもらうと安心でしょう。

コンサルティング会社

資産運用や税務に関するサポートを行っているコンサルティング会社も、頼れる存在です。専門知識を持つプロが揃い、会社の設立から資産の管理・運用、税務、相続などの課題に対する解決策となる資産管理会社の活用法の提案を受けたり、事業の内容によっては実際に業務を任せたりできます。
< id="07">ま>まとめ 自分の資産を守るために資産管理会社を設立することは、大いに有効な手段と言えます。資産管理会社は個人で資産を管理するよりも税制上でさまざまなメリットを享受しやすく、会社設立のハードルも下がったことから、個人投資家や副業を持つ会社員などからの注目を集めています。ただ、資産管理会社を運営するにはコストがかかり、知識も必要です。本当に自分に必要かどうか、専門家の力を借りながらしっかり考えて決断しましょう。

青山財産ネットワークスの特徴

青山財産ネットワークスでは、税理士、司法書士など、国家資格を有する専門家が 150 名以上在籍し、30 年以上の豊富な実績に基づき、お客様のご希望に沿って、資産の管理・運用・相続に関するさまざまなご提案をしております。お客様とその親族の方々にとって最良の結果になるようプランをご提案いたします。

私たちが資産管理会社の設立サポートを通して蓄積したノウハウは、こちらの資料で公開しております。以下のURLから無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2024年3月時点のものです。

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