2022.09.14
財産運用
CRE戦略の導入、不動産の活用により企業価値の向上を実現


企業の価値を高める手段として、「CRE(企業不動産)戦略」を導入している企業が増えています。それは、CRE戦略について理解を深め、不動産を活用することの有用性が認められているためでしょう。この記事では、CRE戦略の概念や実施することでもたらされる効果、実行する際のプロセスなどについて解説します。

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CRE戦略の概要

企業が保有または貸借している不動産を有効活用することで、企業の価値を最適化させるのがCRE戦略です。実際に建物や土地などを保有していない場合も、事業者はオフィスや店舗を借りて営業を行っているため、無関係ではありません。このように、世の中のあらゆる企業にとって、不動産は事業を運営するうえで欠かすことのできない要素です。ここでは、国土交通省が定義するCRE戦略の考え方を踏まえて解説します。

CREとは

CREとは、「Corporate Real Estate」の略称であり、企業が利用(所有・貸借)する不動産のことを指します。企業が事業を運営するために保有または貸借しているオフィスや店舗、工場などに加え、社宅といった福利厚生施設、さらに現在はどの用途にも使用されていない遊休地も含まれます。

自社で所有している不動産を活用することがCRE戦略と捉えられがちですが、実際はもっと幅広い不動産が対象です。CRE戦略とは、企業が不動産を最大限に活用する経営戦略であり、実際に所有している不動産のみ考慮するものではありません。たとえば、現在は賃貸オフィスに入居をしており、将来的に自社物件を購入する、あるいはそのまま借り続けるか判断することも、CRE戦略のアプローチなのです。

CRE戦略の考え方

2008年に国土交通省が発表したガイドラインによると、CRE戦略は『企業不動産について、「企業価値向上」の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方である。』と定義されています。このことから、単に企業が保有している不動産を活用するための戦略ではなく、不動産の活用を通じて企業の価値を高めるための経営戦略と言うことができます。

企業にとって不動産は資産であるだけではなく、企業価値を高めることができる重要な経営資源です。CRE戦略とは、企業不動産を単に保有するだけでなく戦略的に活用することで(※)、企業全体としての価値を高めていくという狙いがあります。

時代の移り変わりによって、社会からの企業に対する視線がシビアになっています。近年では、企業は株主をはじめとしたステークホルダーに対する説明責任を果たすことが重要視されています。その点において、CRE戦略を通じた企業価値の向上は必要なことであり、その注目度は今後も高まっていくでしょう。

※購入、売却、不動産M&A、建築等投資、資産管理会社運用など
参考/国土交通省 『CRE戦略を実践するためのガイドライン』 

CRE戦略がもたらす効果

あらゆる企業にとって、CRE戦略を導入することは企業価値の向上につながる可能性があります。それでは、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。主な効果として、経営コストの削減、本業以外の収益源の確保、資金調達力の向上、自社のブランディングなどが挙げられます。CRE戦略がもたらすメリットの詳細についても解説していきます。

経営コストを削減できる

企業のコア事業に使用されている不動産以外に、ノンコア事業で使用している不動産がある場合は、各不動産の事業価値を計算します。そして、企業不動産のバランスに留意したCRE戦略の立案と実行により、経営コストの軽減や資産効率の上昇が見込めます。
たとえば、各地にあるオフィスや店舗などについて、複数の拠点を集約することで、オフィスの賃料やビルの管理費、修繕費、さらには社内電話やコピー機のリース料など各種経費の削減につながります。このように、自社の不動産の在り方を見直すことで、より効率的に収益を得られる体制を構築することが可能です。

不動産の有効活用で収益が得られる

自社で保有する不動産を売却、または賃貸することで、キャッシュ・イン・フローを改善することが可能です。老朽化して使用していない自社の施設や、使い道がないまま何年も経過している遊休地などは、保有しているだけで固定資産税などの費用がかかります。そのような不動産を売却することにより、維持にかかる支出を抑えたうえに現金(キャッシュ)を獲得することができ、かつ税金を支払う必要もなくなります。

また、資金に余裕があれば新規にオフィスなどを購入し、その物件を賃貸に出して収益を得る賃貸事業に進出するというアプローチもあります。その場合、不動産の立地・種類・価格などを見極めたうえで購入し、資産管理会社や不動産M&Aの活用なども検討することで、企業価値が大きく向上するケースもあります。

資金調達がしやすくなる

保有している不動産を売却することで多くのキャッシュを確保したり、オフィスなどの物件を賃貸して安定的に収益が得られる仕組みを構築したりすることで、不動産価値の上昇やキャッシュフローの改善に成功すれば、企業の財務状況は安定します。その結果、経営に対する信用や企業価値への評価が高まり、金融機関から設備投資など事業拡大に必要な資金を調達しやすくなります。このように、適切なCRE戦略は企業の資金調達力の向上というメリットももたらします。

事業承継時に有利となる

近年では中小規模の企業を中心に、親族などに後継者がいないことから廃業を選択する経営者が増える傾向にあります。そのような情勢のなか、その企業に魅力や価値があれば、「この会社を継ぎたい」という後継者が見つかりやすくなるでしょう。不動産は、企業にとっての重要な資産です。価値の高い不動産を保有している場合や、不動産の有効活用がなされている場合などは企業価値を高く評価されるため、事業承継時に自社に有利な条件で交渉できる可能性が高くなります。

地域の活性化や発展に貢献できる

コスト削減などの理由によりオフィスを都市部から遠方へ移転させる場合、移転先で従業員を採用することもあるでしょう。そのような場合、移転した地域に雇用が創出され、経済の活性化につながります。また、自社の施設を地域住民と共有する、災害発生時の避難場所として活用するなどの取り組みを行うことで、地域貢献に活発な企業という印象を持ってもらえる可能性があります。このように企業のブランディングに一役買うのも、CRE戦略の重要なポイントです。

迅速で柔軟性のある経営判断ができる

不動産の売買などは大きな金額が動き、手続きも複雑です。その点において、自社内にCREの専門部署を設置することもCRE戦略の手法の一つと言えます。専門部署の設置により、保有する不動産の活用や不動産の取得・売却、賃貸契約の締結など、CRE戦略についての判断を迅速かつ柔軟に行えるようになり、ノウハウも蓄積されます。経営陣が直轄する部署を設置する、あるいは不動産に関する子会社を設立するといった方法があります。

CRE戦略を実践しないことによる影響

CRE戦略に取り組むことで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。一方で、企業の状況によっては、「労力も時間もかかるため、現状のまま特に何もしない」という選択もあるかもしれません。CRE戦略を実践しない場合、どのようなことが起こりうるのでしょうか。主なデメリットとして、不動産に関するリスクが生じること、コストを浪費する可能性があることが挙げられます。

不動産に関連するさまざまなリスクが伴い続ける

不動産は、企業にとって重要な資産です。一方で、世界的な不況など経済状況の変化や地震などの自然災害によって、不動産の資産価値が低下するリスクが伴います。CRE戦略に取り組んでいない場合、保有する不動産が自社の大きな経営リスクとして評価されてしまう可能性があるため、不要な不動産は早めに売却するなどあらかじめリスクを分散しておくことが重要です。

コストを浪費してしまう

不動産を保有することで、修繕費や改修費、管理費、共益費などの直接的な費用に加え、物流費や人件費なども付随して発生します。不動産を保有する必要性が社内で十分に議論、検証されていない場合、余計なコストが発生している可能性があるでしょう。また、自社ビルの修繕についても、応急処置での対応を続けるか、全面的な修繕や建て替えを行うかの判断を誤れば、結果として多くの費用がかかってしまいます。こうしたコストの増加を避けるためにも、CRE戦略の導入は欠かせません。

CRE戦略を実施するプロセス


CRE戦略は、企業によって取り組むべき内容が異なります。また、結果を検証し、アプローチを柔軟に変化させていくことも欠かせません。そこで、CRE戦略の実施プロセスにおける基本的な考え方である、マネジメントサイクルについて解説します。CRE戦略のプロセスは、リサーチ、プランニング、プラクティス、レビュー・アクトの4フェーズに分かれています。現状を正確に把握し、適切な計画を立案、実行したうえで、より高い成果を得るための検証までを繰り返すことが重要です。

CRE戦略を成功させるポイント

企業価値の向上というCRE戦略の目的を達成するには、経営戦略の視点に基づく不動産の合理的かつ戦略的なマネジメントが求められます。そのため、CRE戦略を推進し、発展させるためには、マネジメントサイクルの構築が欠かせません。マネジメントサイクルとは、国土交通省の『CRE戦略を実践するための手引き』に登場する、「リサーチ(Research)」「プランニング(Planning)」「プラクティス(Practice)」「レビュー(Review)」「アクト(Act)」を順に行うという考え方です。自社や社会の状況に応じて定期的に見直しを行いながら、最善の結果を目指します。

※参考/ 国土交通省 「CRE戦略を実践するための手引き(平成20年度改訂版)」

フェーズ1/リサーチ

CRE戦略の構築にあたり、まず自社の保有不動産(CREポートフォリオ)を正確に把握するリサーチから着手します。保有している不動産が確認できていない状態では、自社の不動産が抱える課題に対する的確なソリューションを打ち出すことができません。そのため、自社の保有不動産の内容、不動産の市場価値などを把握し、管理上の問題点や抱えているリスクなどの課題を探します。

フェーズ2/プランニング

課題が見つかったら、その課題を解決するためのプランを立案します。まずは、自社の経営戦略、資産や借入金といった経営状況のデータを把握します。さらに、不動産の立地や近隣の鉄道、道路といった周辺の情報を調査し、効果的なCRE戦略を遂行できるように具体的な施策を検討します。プランニングというプロセスで重要なことは、自社の理想の状態を設定したうえで、計画を立てることです。CRE戦略のゴールを明確に設定し、プランニングしていきましょう。

フェーズ3/プラクティス

策定したCRE戦略を、実施していくフェーズです。基本的には不動産の継続保有・使用、購入、売却といったアプローチがあり、プランニングで決めた方針との整合性を守りながら、自社のCREポートフォリオを最適化していきます。

たとえば保有している不動産を売却する場合、自社の経営方針、あるいは地価の変動など不動産マーケットの動向といった要素を考慮し、ポートフォリオの中から売却の候補となる物件を選定します。そして、売却の方法や希望売却価格などについて具体的に検討するといった流れになります。実際の売却プロセスでは、不動産の購入希望者からの問い合わせ対応や金額交渉などを行うことになります。

フェーズ4/レビュー・アクト

実施された戦略の効果を検証することも欠かせません。策定したプラン通りに適切に実行されたか、想定していた成果を残すことができたかなど、CRE戦略の効果を検証(レビュー)します。そして評価をリサーチへとフィードバックし、現状分析や分析方法の見直しといった改善(アクト)に取り組んでいきます。その後は、再びプランニング、プラクティス、レビューの流れでCRE戦略の実行を繰り返すことで、より高いパフォーマンスを目指します

当初の方針通りに戦略を実施することは重要です。しかし、状況の変化に応じて、計画を練り直して新たなアプローチにチャレンジする臨機応変さも求められます。



 

まとめ

企業にとって不動産は、ヒト・モノ・カネ・情報と並ぶ企業価値の向上に資する重要な経営資源の一つです。その不動産もただ保有するだけでは十分ではなく、CRE戦略に基づいたアプローチを行うことで、その真価を最大限に発揮できるようになります。

不動産という分野は専門的な知識やノウハウが求められることもあり、適切なCRE戦略を立てることは簡単ではありません。また、企業の現状分析を行う際、株主であるオーナー等の相続対策や資産管理会社の活用、不動産M&Aの活用等も必要になるかもしれません。そのような場合は、不動産以外にも税務・財務・法務等の知識を総合的に勘案可能な専門家のアドバイスを受けるなどして、的確にCRE戦略のマネジメントに取り組んでいきましょう。

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