2020.07.01
事業承継市況・トレンド
ショックに動じぬ「資金の備え」と「収益多様化」によって次世代へつなぐ

備えは、強い財務体質と経営者自身の財産形成で

コロナ禍に際し、多くのオーナー経営者の方が「生き残る」という基本的な課題を意識されたと思います。非接触のサービスを模索しながら、まずは「資金の確保」を最優先に行ってこられたのではないでしょうか。私たちのお客様の中にも目一杯借入れを増やした企業が複数社あります。金融機関による「貸し渋り」が起きたリーマンショック時と比較すると、まだ融資が止まっていないことが大きな違いです。 ただ、コロナの長期化も含め、今後も大きなショックは十分に起こり得ます。この時救ってくれるのは何と言っても「資金の備え」です。当面の資金の不安がなければ、想定外の危機の時でも経営者は冷静な判断が行えます。
資金の備えは、オーナー経営においては2段階で行うべきものと考えています。まずは会社の財務体質を強くすること。営業キャッシュフローで借入返済を賄え、かつ、売上がなくても最低半年以上は運営を継続できる資金を確保しておきましょう。次に、オーナー経営者自身が財産形成をすること。会社が危機に陥ったときに救えるのはオーナー経営者しかいません。自身の財産形成のために「資産管理会社」を活用して会社に貯めていく、という方法も有効です。

収益多様化で安定を図り、事業承継プランを描く

リスクを分散し、収益を安定化させることも課題の一つです。コロナと共存しなければならない当面の間は「非接触」への業態転換で対応しますが、将来は新たな収益源となる事業の創出が求められます。しかし、既存事業と性質が異なる事業を自社で一から立ち上げるのは至難の業。他社との提携、合弁会社設立、他社事業の買収(M&A)も現実的かつ有効な手段です。
コロナ発生以前、M&A市場は過熱気味で高値での交渉が行われる傾向がありました。しかし、今後はシビアな将来予測に基づいた企業評価がなされ、価格が適正化していくと思います。
なお、「価格適正化」の傾向は、スピードは緩やかながら不動産も同様。チャンスをとらえて優良不動産を取得・運用することで、収益の安定化につながるでしょう。
こうしたチャンスを活かすことができた企業は、現在の異常事態を乗り越え、安定した収益基盤を獲得できると思います。下図のように収益源の分散が図れ、オーナー経営者の財産形成も図れれば怖いものはありません。
更に、事業を取り巻く環境が大きく変化した今、事業承継プランの作成、見直しにも取り組むことをお勧めします。事業承継プランも「視点」が重要で、私たちは下記の5つの視点(①円滑な経営承継、②円滑な財産承継、③納税資金の確保、④財産の保全と運用、⑤まさかへの備え)で設計することをお勧めしています。
私たちは、コロナのような「ショック」が起きても動じない「オーナー経営の備え」や「次世代への承継の備え」に関する実践的な知恵を蓄えて、皆様のお役に立てるよう努めてまいります。

八木 優幸
統括事業本部長 兼 事業承継コンサルティング第一事業本部長

当社創業時から28年間、個人資産家への財産コンサルティング業務に従事。相続事前対策から事後対応までの経験を豊富に持ち、長期を見据えた包括的な相続対策を得意とする。

島根 伸治
事業承継コンサルティング第二事業本部長

オーナー経営者の事業承継の課題と派生する財務やグループ経営の課題の解決に取り組む。日本M&Aセンター様や新生銀行様との合弁事業を推進し、サービスラインナップの拡充に努める。

※役職名、内容等は取材時のものです。