「人生100年時代」が到来。青山財産ネットワークスでは、「財産」の面において支援サービスをご提供する一方、「心」と「体」の健康も大切であると考えています。そこで、高齢者の心と体に関する専門家をお招きし、セミナーを開催致しました。当日語られたメッセージをダイジェストでお届けいたします。
生きたい自分の人生に備える
−認知症というまさかにどう備えるか−
認知症リスクを不安視する方が増えています。認知症に対応する財産承継の手段は複数ありますが、思いがけぬ落とし穴が待ち受けていることも。自分の意思が正しく反映される手段を選択することが大切です。
株式会社青山財産ネットワークス
代表取締役社長
蓮見 正純
公認会計士・ 税理士。青山監査法人等を経て、1996年にプロジェストを設立。2008年より現職。「個人の資産家」「企業のオーナー」に対し、財産の承継・運用・管理の総合的コンサルティングを手がける。
高齢者のこころとからだ
いろいろな役割から解放された高齢期は、人生でもっとも自由な時期。積み重ねた経験や知恵を活かして、新たなチャレンジもできる。年を取ることは、皆さんが思う以上に実は素晴らしいことなのです。
黒川由紀子老年学研究所 主宰 上智大学 名誉教授
黒川 由紀子
臨床心理士・保健学博士。東京大学医学部精神科医学教室、上智大学教授、慶成会老年学研究所所長等を経て、現職。これまで主として病院、福祉施設等で、認知症などの高齢者と家族のこころを支える業務に従事。近年は企業での講演・研修にも携わる。
豊かな老後は自分でつくる
年を取って身体の自由が利かなくなったとき、家族や社会から受けられるサポートには限界があります。老後の生活を豊かに過ごせるかどうかは、自分自身の心の持ち方、そして「早めの準備」にかかっています。
医療法人社団 慶成会 会長
大塚 宣夫
1942年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後に精神科医として病院勤務、フランス政府給費留学生として2年間渡仏。80年、高齢者専門の療養型病院として青梅慶友病院を開設。2005年、よみうりランド慶友病院を開設。2010年 慶成会会長に就任。
セミナーの後半では、蓮見が進行役を務め、大塚先生と黒川先生によるフリーディスカッションを実施。変化する高齢者像や、いかにしてイキイキと老後を
過ごすかについて語っていただきました。
今の時代の「高齢者像」とは
蓮見「超高齢社会」。全人口に占める65歳以上の比率が21%を超えた状態をこう呼びますが、日本では既に28%を超えています。しかも今後は75歳以上の人口比率が増えていきますね。
大塚日本の「100歳以上」の人口推移を見ると、調査を開始した1963年時点で確認できたのはわずか153人でした。ところが今では7万人を超えており、20年後には30万人を突破する見込みです。
蓮見「老後」の期間がさらに長くなるということは、なおさら豊かさを感じられるように過ごしたいものです
黒川今の高齢者は昔より元気なんですよ。例えば、歩行速度はこの10年で11歳若返ったと言われています。つまり今の75歳の人は10年前の64歳の人と同じ、85歳の人は74歳の人と同じくらいの体力があるといえるんです。
大塚昔と比べると、今は戸籍年齢×80 %。60歳なら昔の48歳、75歳なら昔の還暦。まだまだ一花も二花も咲かせられる。周囲は「もう歳なんだから」などと言うものですが、そんな言葉に騙されてはいけない(笑)。
蓮見自分を元気に保つ秘訣とはなんでしょうか。
大塚「大志を抱く」ことだと私は思います。昔から「少年よ大志を抱け」という言葉がありますが、今は「高齢者よ大志を抱け」です。事業を始める、芸術家になる、新しいパートナーを見つける、若い頃の夢を再び追うなど、生きる目標を持つこと。てっとり早いのはこれまでしてきた仕事を生涯現役でやり続けることでしょう。
黒川海外の高齢者に目を向けてみますと、例えばドイツのミュンヘンでは、「おばあちゃんの手作りケーキが美味しい」ということで、高齢女性が集まってケーキを焼いて販売しているんです。その活動を行政がバックアップし、給与も支払われている。日本政府も高齢者にどんどん働いてほしいと考えているようですから、このようなスタイルで、経験や特技を活かして働く手段が広がっていけばいいな、と思いますね。
大塚高齢になってもお金を稼ぐ道はあるけれど、これまで貯めてきたお金を有効に使うことも大事です。これは特に男性に見られる傾向なんですが、自分が今得ている収入の範囲でしかお金を使わない人が多いんです。つまり年金生活に入ると、年金の範囲内で生活しようとする。だから年金生活になったとたん、小さくしぼんでしまう男性が多く見られます。その点、女性のほうが思いきりがいい。
黒川私の母は60歳過ぎてから外資系企業で働くようになり、高収入を得ていましたが、どんどん使っていましたね。人にごちそうするのも好きで、周囲との交流を深めたから、老後はたくさんの友達に囲まれていました。
大塚日本人は質素に暮らすことを美徳としがちですが、せっかく貯めてきたお金は自分を輝かせるために使うべきだと思うし、その覚悟を決めたほうがいい。私は多くの高齢者の最期を見届けてきましたが、金額の大小に関わらず、お金を残すことで家族間の争いを引き起こすケースは非常に多いんです。生きているうちにちゃんと、自分のためにお金を使う。残していくなら、そのお金の使われ方に自分の価値観や意思が反映されるようにしておくべきです。
どんな心で老いに向き合うか
蓮見老いに対してどう向き合えば、豊かな気持ちで一生を終えられると考えていらっしゃいますか。
黒川自身の現状と今後に対してポジティブなイメージを持つことが有効だと思います。ある106歳の方は、コップを落として割ってしまっても「私は立つことができるから落とせたんだ」と発想するんです。心理学では認知行動療法というものもありますが、この方は自分で実践してきたんですね。このように物事の良い面を見つけていくといいと思います。
大塚周りへの感謝の気持ちを持ち続けること、あらゆることを「感謝」という形に転換できることが、人生の最期を豊かに過ごすために一番大事なことだと感じています。そして、感謝の気持ちを言葉なり物なり、あるいはお金を使ってちゃんと相手に伝える。そうすれば人生も世の中もうまくいくでしょう。
蓮見あらゆることをポジティブにとらえ、感謝の気持ちを持つ。そのように自分の思考をマネジメントするということですね。ありがとうございました。