2021.06.30
健康

「心」と「体」の健康セミナー
テストステロン経営のすすめ
~男性の更年期から若さと健康を保つ秘訣~

青山財産ネットワークスは、創業以来、総合財産コンサルティングの提供を通じ、主に「財産」面での支援に注力してまいりました。
一方、人生100年時代を幸せに過ごすためには、同時に健康な「心」と「体」も大切であると考えており、
専門家をお招きしてセミナーを開催しています。

本年4月、「男性の更年期から若さと健康を保つ秘訣」をテーマに行ったオンラインセミナーのレポートをお届けします。

今回お招きした講師は、老化予防研究の第一人者である堀江重郎先生です。
近年、男性ホルモン(テストステロン)の量が、心と体の健康のみならず、生き方にも大きな影響を与えるものとして注目されているそうです。テストステロンが心と体に及ぼす影響、テストステロンの量を増やす方法などについて語っていただきました。

堀江 重郎
順天堂大学大学院泌尿器外科学 主任教授
順天堂大学附属順天堂医院 泌尿器科長
1960年生まれ。1985年東京大学医学部卒。2003年より帝京大学医学部主任教授、2012年より現職。ロボット手術ダビンチを駆使した精度の高い泌尿器手術を行う一方、学際的なアプローチを抗加齢医学、男性の健康医学に導入。日本で初めてメンズヘルス外来を始める。がんおよび難病である多発性嚢胞腎の基礎研究により創薬に貢献。老化予防研究の第一人者。

テストステロンが行動に与える影響――「冒険」「社会性」「競争」

一般的に「男性ホルモン」と呼ばれる「テストステロン」。これは、精巣・副腎で作られ、ほぼ全身に働いている物質です。骨・筋肉・血液を作るほか、性機能、動脈硬化の防止、脂質代謝(メタボ防止)などに影響を及ぼすのですが、近年では「認知力」との関連が注目され、社会学的側面でも研究が進んでいます。

テストステロンの社会学的な意味

テストステロンの社会学的な意味として挙げられるのは、次の3つです。

●冒険のホルモン
●社会性のホルモン
●競争のホルモン

「冒険のホルモン」……例えば、狩りに出て獲物を獲る、旅に出る、あるいは新しいものにチャレンジするということ。チャレンジには、このホルモンが不可欠です。

「社会性のホルモン」……仲間や家族、会社・組織など、他人と関わる場において重要な作用があります。あるいは、「縄張りの主張」とも関連します。昔は部下を厳しく指導していた人に対し、「あの鬼部長も、年をとって人間が丸くなった」なんてことを言いますが、実はホルモンが減ったことで「縄張り意識」が薄れ、寛容になった、ということもあります。

「競争のホルモン」……勝ち負けがあるようなゲームやスポーツ。また、仕事においても、目標を達成する、順位が付くといった場面でこのホルモンが出てきます。

日々の仕事の中で成果を挙げ、それを他人、あるいは社会から評価されることで、このホルモン値はアップします。

リーダーとしての資質にも影響

組織においては「リーダーシップ」が重要です。
リーダーシップについて、経営学者として知られるピーター・ドラッカーは次のように述べています。

●リーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で確立することである
●リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持するものである
●リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜く

ここで強調した「組織」「目標」「正しさ」と、テストステロンは深く関係しています。
リーダーには、意欲やチャレンジ精神も大切ですが、「利他」の気持ち、「社会貢献」への意識も必要だと思います。テストステロンが高い人には「不安・ストレスを感じにくい」という特徴も見られます。

テストステロンの量が、意欲や身体機能を左右する

我々が約300人のビジネスパーソンを対象に行ったアンケート調整では、テストステロンの量と個人の資質の関連性について、次のような傾向が浮かび上がりました。

<テストステロンが高い人>

●目標を定めて達成しようとする
●現実主義だ
●むやみに争わない
●緻密である
●力仕事以外の仕事をしたい

これらの回答からは、「クールで緻密」「超現実主義」「目的達成への強い意志」などの特性が見て取れます。
逆にテストステロンが低い人は、「散漫で大雑把」「逃避的事なかれ主義」「あきらめが早い」などと言えます。

身体的特徴に表れるテストステロン

テストステロンの量は、身体的特徴にも表れています。
もちろん個人差がありますが、次のような人は、テストステロンが高い傾向があります。

●利き手の人差し指より薬指が長い
●顔が長い
テストステロンが低下していくと、意欲や集中力を欠き、チャレンジができなくなります。人間関係が億劫になる、眠りが浅くなる、身体のあちこちが痛む、疲れやすくなる……といった変化も表れ、「男性更年期」と呼ばれることもあります。

また、テストステロンの減少は、内臓脂肪の増加ももたらします。
太ってくると、食事や運動不足などが問題視されがちですが、実はテストステロンの減少が原因であるかもしれません。
さらには、テストステロンの減少に伴い、高血圧・糖尿病・がん・心血管疾患・うつ病・サルコペニア(筋力低下・身体機能低下)などの罹患率、それらの病気による死亡率も高くなることがわかっています。
つまりは、健康で長寿を目指すには、テストステロンを高く保つ必要があるのです。

テストステロンを高め、維持する方法

では、テストステロンを高め、維持していくためにはどうすればいいかをご紹介しましょう。

4つのポイント

●「姿勢」を意識する
胸を閉じてしまうと、ストレスホルモンが増加します。なるべく胸を開くような姿勢をとったり、体操をしたりするようにしてみてください。また、デスクに座ってPC画面を見ているとき、背中を丸めて前傾姿勢をとることが多いですね。この姿勢も、長時間続けるとテストステロンの低下につながります。

●副交感神経を高める
例えば、次のようなリラクゼーションが効果的です。
鍼灸・気功・太極拳・ヨガ・座禅・温泉につかる・美しいものを見る・快いものを感じる
これらは副交感神経を高め、テストステロンを増加させます。

●「照明」を工夫し、夜間はPC・スマホを見ない
LEDなどの強い照明は、交感神経を緊張させ、テストステロンを減らします。
夜間は直接照明より間接照明などを使い、ホテルの廊下のようにほんのりと暗い環境で過ごすことをお勧めします。そして、夜9時以降はPCやスマホの画面をなるべく見ないようにしてください。

●他者から褒めてもらう
他者から評価を得る、つまり「褒めてもらう」ことでテストステロンは高まります。
誰かに褒めてもらうことは、とても大切です。

医学的な側面から見たポイント

医学的な側面からは、以下の項目が大切です。

●十分な睡眠(7~8時間)
●筋トレ
●亜鉛
●ビタミンD

私の研究では、40歳以上の6~7割は亜鉛が足りていません。亜鉛が減ると、活力の低下、食欲減退、味覚障害、抑うつなどを引き起こします。皮膚が弱くなり、高齢の方は床ずれができてしまうこともあります。
一般的な老化現象と捉えられがちですが、テストステロンの減少が招いている可能性があります。

なお、亜鉛を含む食品の代表格は貝類。特に牡蠣に多く含まれています。積極的に摂ってください。

もう一つ、欠かせない栄養素が「ビタミンD」です。
ビタミンDは太陽の光を浴びることで増えますので、5月以降には値が高くなりますが、冬季には低下します。これに伴い、テストステロンも低下します。

なお、日本ではあまり知られていませんが、ビタミンD濃度とコロナ感染者には相関が見られます。
ビタミンD濃度が低いと、コロナに感染・死亡しやすいことが知られており、アメリカではビタミンDのサプリメントの売上が増加しました。イギリスでは、ワクチン接種開始前に、高齢者にビタミンDサプリを配布していました。ビタミンDは免疫強化の近道なのです。

ビタミンDを食品から摂取するなら、「鮭」が最適です。鮭の一切れに、十分な量のビタミンDが含まれています。サプリメントを利用してもいいでしょう。サプリメントのビタミンDは、いくらとっても身体に害になることはありません。

まとめ

まとめとして、男性ホルモンを高める10カ条をご紹介しましょう。

1.ストレスを和らげよう
2.ゆとりある生活を送ろう
3.食事を大切に
4.短時間でもエクササイズ
5.良い睡眠をとろう
6.仲間を大切に
7.おしゃれをしよう
8.凝り性になろう
9.大声で笑おう
10.目標を持とう 冒険をしよう

日々の生活の中で、ぜひ意識してみてください。