2021.09.30
財産承継
不動産の相続はどこに相談する?お悩み別に依頼先を解説

不動産の相続が発生した時、まずは何から始めるべきでしょうか?
相続税申告のための価値の査定、複数の相続人での分割協議、不動産の名義変更……等々、どこから手をつけていいのかわからない時はまず、専門家へ相談をしましょう。
 
しかし、不動産の相続においては、多くの問題とそれに対する専門家がいることから、どこに相談すべきか非常に悩ましいことが多いです。
不動産の価値や相続人同士のトラブルの有無によって必要な専門家は変わってきます。選択を誤ると、余計な出費が発生することもあり得ます。
 
この記事では、不動産を相続するにあたって相談先を正しく選択するため、お悩み別に相談先をご紹介し、詳しく解説していきます。
最後まで読むことで、相続に向けてやるべきことの道筋がはっきりと見えてくることでしょう。

不動産の相続、どこに相談すべき?

「相続といえば遺族間でのトラブルが起こりがちだから、まずは弁護士?」
「不動産を相続するには名義を変更しなくてはいけないから、すぐに司法書士に相談するべき?」

相続に関する相談先で悩んだ時、いくつかの士業や専門家は思いついても、不動産も含まれるとなるとまた難しくなります。
インターネットで調べても、「相続税の申告は10ヶ月目までに」「売却するなら早めがお得」などの情報が多く、焦ってしまうばかりで具体的な情報が得られないこともしばしばあります。

相続の状況は人それぞれ異なり、同じではありません。もちろん相談先も、不動産の価値や相続人の状況によって変わります。

不安をあおる情報に惑わされず、まずは相続人自身の状況をきちんと把握した上で正しい相談先を選ぶことが第一です。

4つのお悩み別に相談先をご紹介

ここからは、不動産相続における代表的なお悩みを4つに絞り、それぞれの相談先を紹介します。

Point
①相続税に関する相談は「税理士」へ  
②相続によるトラブルの相談なら「弁護士」へ   
③名義変更の相談は「司法書士」へ   
④不動産の活用を相談したいなら「不動産会社」へ
 
それぞれの専門家ごとにできる業務の内容には違いがあります。
一つずつ、詳しく解説します。 

①相続税に関する相談は「税理士」へ     

全ての相続に相続税がかかるというわけではなく、現行の法律では、相続人が1人の場合、基礎控除額を超える財産がないと、相続税法定を支払う必要はありません。
ですが、不動産を相続する場合は、無関係な話ではないでしょう。

相続税の申告は相続から10ヶ月以内に行わなくてはならないことと、不動産の相続税評価額の算出は非常に複雑であるため、専門家である税理士に早めに相談をすることをおすすめします。
不動産の状態によっては、税金の控除や特例が受けられる可能性があります。
すべての相続税額を正確に、そして、税額控除等の適用要件まで把握して個人が行うには限度のある作業です。土地や不動産の相続評価の実績がある税理士へ相談するようにしましょう。

●相続税の申告手続きができるのは税理士だけ

税理士・弁護士・司法書士・行政書士・信託銀行など各士業の資格士はそれぞれ、相続財産の調査を行うことはできます。 ですが、相続税の申告を行えるのは税理士と弁護士だけなのです。

弁護士は税理士ほど、税金に関する専門的な知識を持ち合わせていないので、相続税の手続きはおのずと税理士の一択となります。
誤りのある申告で加算税を課されないためにも、税理士の利用が確実でしょう。

相続税申告の税理士報酬は、遺産の総額の0.5%〜1.0%ほどが相場とされています。
ただし、相続に土地を含む場合は名義変更を行わなくてはいけないため、税理士だけではなく司法書士への依頼も必要になります。
税理士への依頼で、相続の全ての手続きが完了するわけではないのでご注意ください。
 
●相続税の申告条件とは         

先ほども述べたように、相続税は基礎控除額を超える場合に申告をする義務が発生します。ただし、基礎控除額以下であっても、特例を適用した場合などは申告が必要になりますのでご注意ください。
     
相続人の人数によって、基礎控除額が変わるという点も留意しておきましょう。
これは、相続財産の評価額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以下であるかどうかで計算されるためです。

相続税は申告までのタイムリミットがあるため焦りがちですが、まずは相続人の人数を確認してから、資産相続の基礎控除額がいくらになるかを調べます。
その上で、基礎控除額以上の相続遺産がある場合には相続申告が必要となりますので、税理士へ相談をしましょう。

②相続によるトラブルの相談なら「弁護士」へ   

弁護士へ相談をするケースは、すでに相続人同士で不動産を含めた遺産をめぐるトラブルが発生してしまっている、または発生する可能性が高い、という状況です。
トラブルが発生していなければ、弁護士への相談は必要ありません。

相続による遺族間のトラブルは、「争族」という言葉があるほど各所で頻発しており、当然それに特化した弁護士や弁護士事務所も存在します。
特に土地や不動産の相続となると、分割が難しくなり、「兄弟で共有名義にする」「売却して利益を分割する」といった意見が分かれてトラブルになりがちです。

そのため、遺産相続トラブルに強い弁護士だけでなく、不動産も含めた遺産の相続トラブルに強い弁護士を選ぶことが重要です。
 
●裁判の代理人手続きができるのは弁護士だけ

法廷で争う内容によっては、簡易裁判所でのみ法務局認定の資格を持った認定司法書士が代理人を任せられるケースなどがありますが、一般に特定の誰かの代理人を務められるのは弁護士のみです。

弁護士以外のその他の士業が、遺産分割協議の交渉や調停などにおいて代理人を務めることは出来ません。
早めに弁護士に相談をしておくことで、実際に裁判となった場合にそのまま代理人となってもらえるので、無駄な費用や手間が発生しないという利点があります。
 
●依頼にかかる費用は高額             

弁護士へ依頼をする状況となってしまった場合、相続に関するほかの相談先と比較して高額な費用がかかることは留意しておきましょう。

では、相場はどれぐらいなのか?というと、相談した弁護士及び弁護士事務所によって異なるため、相場は存在しないという答えになります。
これまでは、相続問題を依頼した際の弁護士への報酬は「報酬規定」として公式に定められていましたが、現在はこの規定が撤廃されています。費用は事務所ごとに違いますので、良心的な価格で相談できる法律事務所を選択しましょう。
 
ただし、旧「報酬規定」を元に費用を設定している事務所も多いので、参考としてご紹介いたします。

経済的利益の額が 着手金 報酬金
300万円以下の場合 経済的利益の8% 経済的利益の16%
300万円を超え3,000万円以下の場合 5% + 9万円 10% + 18万円
3,000万円を超え3億円以下の場合 3% +69万円 6% +138万円
3億円を超える場合 2% +369万円 4%+738万円


参考:(旧)日本弁護士連合会報酬等規定 遺産分割協議の例:相続財産のうち6000万円を経済的利益として獲得する場合、弁護士に支払う報酬は498万円で、この半額が着手金となりますので、合計では747万円となります。

③名義変更の相談は「司法書士」へ 

先程ご紹介した「税理士」と「弁護士」とは異なり、不動産を相続する上で司法書士への相談は必須であると言えるでしょう。
なぜなら、不動産を相続するために必ず行う名義変更(相続登記)は司法書士の専門分野であるためです。

厳密には、名義変更は司法書士だけではなく、

1. 個人で手続きをする
2. 弁護士に依頼する

といった方法でも行えます。
しかし、手順がかなり複雑であることと、専門的な知識が必要であることからあまりおすすめはできません。
費用はかかりますが、より確実に名義変更を行うためには迷わず司法書士へ依頼をしましょう。
 
●トラブル・相続税が無ければ手続き完結

相続人同士のトラブルが無く、相続税の申告義務が発生しなければ、司法書士への名義変更の依頼で不動産相続の手続きは完結します。
名義変更は相続税と異なり、登記を行う期間の制限はありません(※ただし、相続登記の義務化について、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)が決定され、2023年度に施行される予定です)。しかし、この登記手続きを行うことで初めて第三者に対し不動産の権利を主張することができるので、長期間登記をしないことは時間差で相続人同士のトラブル発生に繋がってしまう可能性があります。
早めの相談と手続き完結を心がけましょう。
 
司法書士に対する相続登記手続きの報酬額は、不動産の数や手続きの難易度によって変わりますが、一般的には10万円前後です。
費用には、戸籍や住民票等の取得費用が含まれている場合が多いので、報酬を下げて節約したい方は、ご自分で書類収集等を行えばその分報酬を安くすることも可能です。

●「相続登記専門」の事務所に注意

司法書士の中には登記専門の事務所があり、すべての士業が行っている相続財産調査すら拒んで行ってくれない場合があるので注意が必要です。
登記の依頼を司法書士へ行うときは、WEB情報など確認し、所属事務所の業務内容や料金表などの確認を行いましょう。
 
登記のみを司法書士に依頼し、それ以外の手続きを一般の方が自分自身で行うのは困難です。その他の士業へ依頼し直すと手間と余計な予算がかかってしまうので、登記を依頼する前に事務所の業務範囲を必ず確認するようにしましょう。

④不動産の活用を相談したいなら「不動産会社」へ

不動産は、相続をしたら終わりではありません。
不動産を活用することなく放置していると、固定資産税等の発生のみならず、建物の維持・管理費用等のコストがかかってしまう一方です。
これから先、どのように活用、運用していくか、また相続した不動産にどれだけの価値があるのかなどは不動産会社に相談しましょう。

不動産会社に、不動産相続の全ての手続きを一任できるわけではありません。
これまで紹介した①〜③の相談先と並行して、あくまで土地・建物のプロフェッショナルとしての意見を仰ぐようにしましょう。
 
●売却・活用の相談が可能

不動産と相続人の状況によって、最適な運用方法というものはそれぞれ異なります。

不動産会社に相談をすることによって、例えば「残った物件をそのままアパートにするより、リフォームをしたほうが修繕費として計上でき税金対策になる」といった専門的なアドバイスをもらえます。
マンションの維持費や償却について、また、借地権を行使する場合には複雑なルールがあり、これらもやはり専門家である不動産会社へ相談することで後のトラブルも防げるでしょう。
 
不動産の活用に限らず、相続した不動産を売却したいケースでも不動産会社に相談することとなります。
ただし、活用、売却いずれの場合でも、相談する不動産会社の選定が非常に重要です。
場合によっては、せっかく親が遺してくれた不動産がかなり安く買われてしまった、または活用する上で損をする形になってしまうという可能性も起こり得ます。
 
●不動産活用を市役所へ相談するケースも         

いきなり不動産会社への相談は心配という方は、市役所へ相談をするという手段もあります。

役所内の無料相談窓口ですが、実際に相続業務を対応している士業である弁護士、税理士、司法書士などが市役所から依頼を受けて業務を行っていますので安心です。
 
無料相談窓口にいる士業の方々は、役所より直接受任が禁止されていますので、絶対依頼しなければという切迫感がないためプレッシャーなく相談ができます。その反面、実・依頼発注はその場ではできません。
実・依頼発注は弁護士会や司法書士会、税理士会などの機関へ連絡をして依頼する必要があります。

また、相続した土地が道路や公共施設に準ずる場合は、自治体に寄付するという選択肢もあります。その場合も市役所へ相談し、手続きを行います。

相談先に迷ったら、不動産相続のプロに頼る手も

個人で士業や専門家へ依頼するのがベストと言っても、初めての相続やトラブルの懸念がある状況下で、個人で相談と選定を行うのはハードルが高いと感じる方が多いのではないでしょうか。

相続は多くの方にとって、一生のうちに何回も経験することではありません。
特に初めての相続となれば、まとめて相談ができるところを求めるのは当然でしょう。
そんな時は、不動産相続のプロフェッショナルに相談をするという方法があります。

相続に関する困りごとを抱える方のために、相談、セミナーを行っているコンサルティングサービス会社というものがあります。
中には、不動産の相続に特化したコンサルティングを行っている会社もあるのです。まさしく、不動産相続のプロフェッショナルと言えるでしょう。
相続財産というのは、デリケートな個人情報です。このような実績と信頼のある不動産相続コンサルティング会社なら安心して相談をすることができます。


 

まとめ

不動産を相続する上で、相続税は税理士、相続人トラブルがある場合は弁護士、名義変更は司法書士など、相談内容ごとの相談先について解説いたしました。
場合によっては、不動産会社や市役所といった相談先を検討することもあるでしょう。

しかし、相続に関する困りごと、特に不動産が含まれると相談先の選定も簡単ではありません。
そんな時は、不動産相続に強いコンサルティング会社に相談をすることで、心配事をまとめて解消することができるでしょう。

不動産の状況、相続人の状況を分析し、的確な判断が下せるのはやはり専門家です。
個人で手続きを行って途中で委託に切り替えるといった非効率的な進め方をしないためにも、相続が発生する前から不動産相続のプロフェッショナルに相談をすることをおすすめします。
 
青山財産ネットワークスは創業30年以上、上場している独立系の総合財産コンサルティング会社として、相続・事業承継・不動産の様々な課題解決のご支援をしています。
 

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