2021.10.26
事業承継

倒産と廃業の違いとは?
それぞれのメリット・デメリットから手続きの流れまで徹底解説

経営者として事業を行っているからには、事業を拡大し継続していきたいと誰もが願うことでしょう。
しかし、何らかの理由によって事業をたたむことを検討する時、「廃業」または「倒産」という形で最後を迎えることになります。

廃業と倒産は、似ているようで全く異なる意味を持ちます。
事業をたたむことを実際に検討している方も、今現在事業が安定している方も、この2つの言葉の違いとそれぞれのメリット・デメリットを知っておくことは非常に大切です。

この記事では廃業と倒産の違いから、経営は退いても事業を継続させるための方法まで、詳しく解説いたします。

廃業と倒産は何が違う?


世の中には沢山の会社が存在しており、次々と新しい会社が設立されています。
その一方で、経営が困難になり継続を断念する会社もあります。
そんな会社には、廃業するケースと倒産するケースがあるのはご存じでしょうか?

一般的に、会社が経営を終了せざるを得なくなるというイメージは倒産という形かもしれませんが、実際には廃業という形も多く存在します。
そもそも、倒産も廃業も同じことだと思っている人も多いかもしれませんが、実はこの2つには明確な違いがあるのです。

簡単に言うと、「経営者の任意の事業終了か」「債務が完済できる経済状況か」によって、廃業か倒産かが決まります。
さらに、廃業と倒産では事業終了後に経営者自身や周囲に与える影響も変わってきます。

今回は倒産と廃業の違いに着目し、それぞれの手続きの方法などを紹介していきます。
事業をたたむ話題でよく聞く、破産や清算という言葉についての理解も深まるでしょう。

特に現在何かしらの事業を行っている、または行う予定がある人は事業が上手くいかなかった時のことも知っておいて損はありません。
倒産と廃業の違いを、事前にしっかりと理解しておくと良いでしょう。


廃業とは


まずは廃業について解説していきます。

廃業はその名の通り、事業を終わらせることを言います。
事業を終わらせる理由はさまざまですが、主に経営者自身が事業を終わらせることを決定した場合が「廃業」となります。
特徴的なのは事業を続けようと思えば続けられる状況での事業終了という点です。

倒産は、事業が続けられない状態に陥っている場合に使う言葉なので、その点で明確に違いがあります。
廃業したという表現の場合には、どちらかと言うと資金的な問題以外の理由で事業をやめたと考えられます。

廃業を検討する状況

廃業は資金的な問題もなく、これからも経営していくことが可能な状態で事業を終わらせる場面となります。
では、具体的にはどのような理由で廃業することが多いでしょうか。
1. 後継者が決まらない
現在の日本では廃業する理由が後継者不足というケースは非常に多いです。
特に中小企業の廃業理由の大半を占めていると言っていいでしょう。
2. 扱っている商品やサービスに将来性がない
現時点では黒字でも、将来的に経営が難しくなることが目に見えている場合は廃業することがあります。
これは小規模な事業者にありがちな理由です。
 
もちろんこの他にも、さまざまな理由で廃業となるケースはあると思いますが、特に後継者不足は深刻であり、国が抱える課題でもあります。
少子高齢化の影響もあり、今後ますます後継者不足で廃業する会社が増えていくはずです。  

廃業の手続き

事業を終わらせて廃業するためには必要な手続きがいくつもあります。
具体的には以下のような手続きを行う必要があります。
・会社解散と清算人に関する登記

・官報公告と債権者への通知

・債権の回収と残っている資産の売却

・税金を含む債務すべての支払い

・債務の支払いを終えた上で残った財産を分配

・株主総会における決算報告の承認

・解散時と清算結了時の確定申告

・清算結了登記

廃業の流れ

廃業を決める理由はさまざまですが、例として後継者が決まらず健康上の理由でこのまま仕事を続けることが難しいと感じたために廃業するとします。

廃業することを決心したら、清算手続に詳しい弁護士を探して相談するところからはじめます。
相談をすることで、より具体的にどのような手続きを行えばいいかアドバイスをもらえますし、代行可能な部分については代行を依頼するとスムーズに進められるでしょう。

倒産とは

倒産とは、事業を終わらせるつもりがなくても、資金繰りの問題で事業を継続できなくなった場合のことも倒産と言います。

倒産とひとまとめにしていますが、実際には会社が無くなってしまうケースと、再建の可能性があるため倒産しても事業を続けるケースがあります。
前者は「清算型」、後者は「再建型」と呼ばれます。

精算型は、会社が持つ財産をすべて換価処分して債務を返済し、会社そのものを消滅させる方法です。

再建型は、精算型のように財産をすべて使って債務を返済するのではなく、必要な財産は維持しながら負債を圧縮して会社の経済的な再建を目指す方法です。

基本的には、倒産=精算型という認識が多いかと思います。

倒産を検討する状況

倒産は、検討してその手続きを踏むというよりも、倒産手続きをせざるを得ないというケースが多いです。
資金繰りが厳しいもののギリギリ事業を続けられている状況で、状況が良くなる見込みがないということであれば、諦めて負債が増える前に倒産するという判断をすることもあります。

倒産の手続き

倒産には、先ほどご紹介した「清算型」と「再建型」の2つがあります。

ここでは、債務超過の場合の「清算型(破産)」で解説をいたします。
完全に事業を終らせる破産手続きは以下のようになります。
・弁護士への相談、破産申立を依頼

・弁護士から債権者宛に破産申立の予定を通知してもらう

・必要な書類を用意して管轄の裁判所に破産申立

・破産手続開始決定を裁判所が発令、破産管財人の選任を行う

・債権者集会の実施

・裁判所による破産手続終結決定後、破産手続終結の登記

倒産の流れ

事業を運営するための資金繰りに苦労し、支払日になっても支払いができないという事態が発生します。
弁護士に相談し、法人破産手続きを依頼することになります。

債権者には、弁護士を通して破産申立の通知を送ってもらい対応してもらいます。
破産申立に必要な書類を用意して裁判所にて破産を申立した後、裁判所によって破産手続開始決定がされ、破産管財人が選任されます。

その後裁判所にて債権者集会が行われ、処理が全て終わると裁判所によって破産手続の終結決定が行われ、手続終結の登記をし、全ての手続きが終了します。
 
破産は廃業と異なり、裁判所への届出などが必要となるため、手続きとしてより複雑です。

廃業するつもりが、倒産となってしまうパターンも

 

場合によっては、廃業するつもりで検討していった結果、資金が不足し倒産せざるを得なくなるというケースがあります。

例えば資産の評価額が間違っていて、実際にはそれほどお金にならない場合などが考えられます。
また、通常の経営ではあまり問題にならない、一斉に退職する場合の退職金の金額や、事業終了に伴って違約金が発生する契約なども落とし穴になりがちです。

これらは事前にしっかりと計算しておけば本来は問題ありません。
廃業を考え始めた段階で一度確認しておくことで、このような事態は避けられるかもしれません。

▽債務超過と赤字の違いについてはこちら

「債務が完済できるか」がポイント

廃業か破産かというのは、債務が完済できるかどうかによる違いが大きいです。

破産よりも、廃業という手段をとれるのであれば廃業を選択した方が良いということは、ここまでの説明を読めば理解できるでしょう。

そこで、実際に廃業する前に債務が完済できるかどうか、資金の状況や廃業時に必要になる費用も含めて計算しておく必要があります。

どんぶり勘定では予想外の出費でギリギリ完済に届かないというケースも考えられます。
特にどういったポイントに注意しておくと良いのかについて紹介していきます。

債務が完済できるかどうかの調べ方

まず会社の資産がどうなっているのかを、正確な数字で知る必要があります。
事業を終了する際に、売却できる資産と回収できる予定の金額をきちんと把握します。
特に売却できるものに関しては、正確に価値を評価しておかなくては誤差が大きくなってしまい、危険です。
 
次に債務の額をしっかりと把握することも大切です。
単純ではありますが、債務よりも資産の評価額が高ければ完済できるという関係なので、両方の金額を正確に把握する必要があるわけです。
債務のメインは、銀行などからの借入や仕入の債務などが挙げられます。
 
また、事業終了を決定してから完了するまでにはある程度時間がかかるため、その間に発生する税金や保険料なども債務として計算する必要があります。
さらに従業員の解雇によって退職金を出すケースでは、かなりのまとまった金額の支払いになるのでこちらも注意しましょう。

債務の返済以外に発生する費用

債務の返済以外にも、事業を終了するためにかかる実費も考慮する必要があります。
具体的には、借りている事務所や施設の退去にかかるお金、あるいは不良在庫の処分にかかる費用などさまざまです。

この他に、忘れてはいけないのが専門家の費用でしょう。
多くの場合で顧問税理士や司法書士に依頼をすることになると思いますので、そちらの費用も発生します。
 
これらの費用をすべて計算して、債務よりも資産の方が大きな金額になれば問題なく事業を終了できるというわけです。

実際にはギリギリの計算だと予想外の出費でお金が足りなくなることもあります。
余裕を持って100万円くらい準備した方が良いでしょう。

倒産・廃業を検討するなら、「第三者承継」も選択肢に

倒産や廃業を検討する理由は様々だと思いますが、場合によっては事業継承を考えた方が良いかもしれません。

特に資金的に問題がなく、後継者問題などで廃業を考えている場合には最良の選択となる可能性があります。
また、倒産目前でも業界が伸びている最中で、利益を出せる状況がすぐそこまで来ているのであれば、倒産や廃業よりも第三者承継、いわゆるM&Aを検討するべきです。
 
そもそも、第三者継承とはどういうものかご存じでしょうか?
ごく簡単に言ってしまえば経営者として保有している株式を売却して、事業ごと他社や経営者に受け渡しするような形になります。

つまり、第三者へ会社の事業を承継することで、従業員や取引先に対する迷惑を最小限にすることができるというわけです。

もちろん従業員が今後リストラされてしまうといった可能性はありますが、事業継承の場合そのまま働き続けられるケースが非常に多いのであまり心配しすぎる必要はないでしょう。

青山財産ネットワークス|書籍

事業承継のプロに相談をしよう

近年は後継者問題によって廃業というケースが増えてきたため、事業継承のコンサルティングというサービスも増えています。

会社経営をしていて、普段から様々な経営方法について考えていたとしても事業継承に関わる手続きやメリットなどに詳しい人は少ないでしょう。

廃業などを考えているのであれば、早めにプロに相談した方が精神的にも、金銭的にも負担が少なく済むでしょう。

相談会や無料セミナーなども行われているので、気軽に相談してみることをおすすめします。

まとめ

廃業と倒産の違いに着目して解説いたしました。
事業をたたむということは、大変な労力とお金がかかってしまうものです。

手続きも多く手間がかかるため、経営者にとってはなかなか負担が大きいもので、出来ることなら経営から退くとしても事業は継続したいでしょう。

そこで注目が集まっているのが事業承継です。

経営者としてこれまで培ってきたことを後世に残すためにも、廃業を検討する前にM&A等による第三者承継を考えてみましょう。

事業承継のコンサルティング会社では、事業承継を検討している企業のオーナー向けの相談会やセミナーを実施しています。

「事業をたたむことを考えるのはまだ早い……」と後回しにせずに、いつ訪れるかわからないもしもの事態に備えて、選択肢の幅を広げる準備をすることが大切です。
 
廃業を考えている方もまずは資料請求から。縮小型の事業承継ファンドのメリットや事例、当社の支援内容がわかります。

おすすめ記事はこちら