現在日本では、廃業をする会社が増加傾向にあります。
その多くの理由が、経営者の高齢化による後継者不足であることをご存知でしょうか。
2025年には、日本の中小企業およそ127万社が後継者不足に悩まされると言われており、「2025年問題」とも呼ばれています。
しかし、後継者不在の事業は廃業の選択肢しかない、というわけではありません。
この記事では、後継者不足による廃業の原因やリスク、そして廃業以外の方法である「第三者承継」について、詳しく解説していきます。
廃業の理由は経営不振だけではない
一般的に事業を廃業にするといえば資金的な問題を想像する人が多いかと思います。
確かに経営がうまくいかずに資金難によって倒産するというケースは世の中に沢山存在していますから間違いではありません。
しかし、現在では資金的な問題が無いどころか、うまく利益をあげている企業でも廃業することが増えてきています。
廃業に至る理由はそれぞれ異なりますが、今回は特に経営の後継者がいないことによる廃業について焦点をあてて詳しくお伝えしていきます。
後継者不足で黒字廃業する企業が増加中
現在の日本は皆さんがご存じの通り少子高齢化が極端に進んでいます。
それは会社経営などにおいても強く影響が出ており、経営陣の年齢の高さは非常に問題になってきています。
特に中小企業の経営者の高齢化が進んでおり、事業としては順調でも後継者が居ないことによって廃業の危機に陥ることも少なくありません。
近年の日本の中小企業の数は年々減少傾向にあり、数万単位で減り続けているわけですが、その中には黒字経営にも関わらず廃業となっているケースが多数含まれているのです。
休廃業・解散した企業のうち8割以上が高齢経営者
少し古いデータにはなりますが、2020年の休廃業・解散をした企業の経営者の年齢がデータとして出ています。
2020年に休廃業・解散した件数は4万9,698件で、その多くが高齢経営者だったわけです。
年齢が判明しているものを計算すると実に84.2%が60歳以上の経営者だという事がわかりました。
70代以上に絞ってみても41.7%と、非常に高齢者の割合が多いことが数字として出ているわけです。
そして、高齢化は現在進行形で進んでいるわけですから、今後、経営者の高齢化は対策をしない限り改善しないことは明白です。
日本における中小企業は99%で大企業と言われる企業は全体の1%にも満たないため、日本全体の問題として捉える必要があります。
出典:
「2020年「休廃業・解散企業」動向調査」(東京商工リサーチ)
2025年には127万社が後継者不足に?
誰にでも簡単に想像できることではありますが、今後数年経てば更に経営者の高齢化は進む可能性が非常に高いです。
具体的にはこのまま推移していくと2025年にはおよそ127万社が後継者不足で悩むことになります。
127万社と言うと中小企業の半数を超えますから、中小企業の半分は後継者問題で廃業する可能性があるということです。
これは2025年に70歳を超える経営者が245万人になり、そのうちの半数が後継者が決まっていないというデータが根拠になっています。
実際に日本の会社の半数がなんの対策もせずに廃業になるというシナリオは考えにくく、後継者が決まるケースもあるはずです。
しかし多くの中小企業において後継者が決まらないままとなってしまうという可能性は十分に現実で起きうるといえます。
後継者不足が発生する原因
ここまで日本の企業では後継者不足によって事業が続けられなくなるケースが増えているということを紹介してきました。
そして今後も対策をしなければ後継者不足は加速していくことは間違いありません。
まず、対策するためには後継者不足の原因をしっかりと把握することが必須です。
後継者不足問題の原因は個々のケースで様々ですが、大きく分けて以下2つが考えられます。
- 経営者の高齢化による影響
- 少子化による影響
2つに分けて解説していきます。
1.経営者の高齢化による影響
まずは経営者の高齢化について考えていきます。
そもそも日本全体が高齢化社会ですから、経営者の年齢が高くなっていく傾向は理解しやすいはずです。
そこに加えて日本企業の多くは未だに年功序列を重んじる傾向にあります。
実力のある若い人間が役員に駆け上がることが難しく、経営者が交代したとしても既にその人物もそれなりの年齢というケースは少なくありません。
若い人を後継者に選ぼうとしても、年功序列の意識が強い日本企業ではスムーズにバトンタッチできることは稀です。
2.少子化による影響
次に少子化が後継者不足にどのように影響しているかという点について考えます。
従来の日本企業であれば、親の経営する会社へ就職するというケースは非常に多かったのですが、近年はそういった傾向が少なくなりつつあります。
もちろん子供の就職先は本人の希望が優先されるべきですが、単純に子供が多ければそのうちの誰かが跡継ぎとして入社する可能性は高まります。
しかしながら日本は少子化が進んでいることもあって、子供が居ても1~2人では単純に跡継ぎとしての入社をしない・できないというケースも多くなるわけです。
廃業をすることで発生するリスク
後継者問題によって、黒字経営でも廃業することが増えてきています。
廃業には、ある程度リスクも存在します。
大切なのは、リスクばかりに気を取られてしまわないことです。廃業を選んだ経営者の中には、前向きな理由で廃業を決めた方も多くいます。
「廃業しかない」という状況に限らず、「あえて廃業をする」というパターンも増えていっていることは念頭においておきましょう。
仮に廃業を選択した場合において、発生する可能性のあるリスクを解説いたします。
従業員が失業する
廃業することによって真っ先に思いつくリスクは従業員の失業です。
1社2社の話であればそれほどの問題にはなりませんが、少子高齢化による後継者不足は日本中の多くの企業が問題として抱えています。
日本中の企業が同じように廃業するとなれば、多くの雇用が失われます。
経営自体が失敗しているなら仕方ないことではありますが、特に安定した黒字経営にも関わらず廃業という形になってしまう、本来であれば失業しなくてもよかった人たちが大勢仕事を失ってしまうというのは問題でしょう。
取引先の連鎖倒産を招く
中小企業と言っても、事業を展開するうえで多くの企業との取り引きがあるのが普通です。
場合によっては1社からの仕事に売上の多くを依存しているケースも少なくありません。
そんな関係のなかで廃業することになれば、従業員の失業問題だけでなく取り引き先の経営悪化という問題に発展する可能性も十分にあります。
場合によっては連鎖的に倒産ということもあり得ますし、日本中で同様のケースが多発すれば影響は非常に大きくなります。
地域社会の活気がなくなる
中小企業の多くは地域密着で事業展開をしている事もあり、地域社会との関係はなかなか切り離せません。
従業員も地元の人を多く雇っているでしょうし、販売している商品やサービス自体も地域へ多くの貢献をしているはずです。
そういった企業が複数廃業ということになれば地域社会の活気が失われてしまうのは必然です。
業種によっては、人々の生活に影響も
行っている事業ごとに廃業の影響には差がありますが、業種によっては大きく生活が変ってしまう人も出てきます。
提供している商品やサービスにおいて地域で競合がいない場合を考えてみましょう。
例えば、地方で日用品などを販売する小売り店があったとして、経営者が高齢によって引退するものの、後継者がいないという理由で廃業したとします。
近隣に他の店があるならば問題ありませんが、近くに同じような店が一切なければ、地域の住民の生活に大きな影響を与えることは想像できるでしょう。
2020年以降は大廃業時代?
なんと2020年には、休廃業・解散した企業は5万件弱にも及びます。
中小企業の経営者で一番多い年齢を抽出すると、1995年には47歳の割合が多かったのですが、2015年には66歳が一番多いという結果になっています。
この20年間でほぼそのままスライドした形となっていますから、2020年以降どうなるか数字のうえでは理解できると思います。
しかし、現実問題としては70歳を超えてくると今までのように働き続けることは難しく、後継者がいなければ廃業が相次ぐのは仕方がありません。
後継者不在に廃業以外の選択肢は
後継者が不在でも事業を継続するためにはどのような選択肢があるでしょうか。
まず、この後継者不足問題を重く捉え、事業承継5ヶ年計画により事業を続けられる環境作りに力を入れるべきでしょう。
その中では、そもそも事業承継診断等の支援によって事業承継のニーズ自体を掘り起こす活動なども行うことになります。
そして小規模M&Aマーケットの整備や事業再編がしやすい仕組み作りなども推進されています。
経営者視点で見ると、事業を継続してくれる人材を掘り起こすという選択とM&Aなどによる事業の再編や統合による継続という選択肢があります。
廃業を検討する前に。第三者承継を考えよう
ここまで、日本の中小企業の廃業理由の多くは高齢化によるものだと説明してきました。
つまり、経営するうえで資金的な問題を抱えていないケースが多いということになります。
廃業してしまえば従業員は職を失ってしまうわけですし、特に規模の小さな会社では家族同然の付き合いをしていた人達の収入源をなくしてしまうことになるのです。
ここで検討すべきなのが、「第三者承継」という選択肢です。
事業をうまく承継することで、その人達の収入を守ることにもなります。
後継者がいなくても、例えば外部から招聘した人へ事業承継したり、M&Aをすることで廃業しないという選択があります。
第三者承継のメリット
第三者承継にはメリットがいくつかあります。
まず、これまで紹介してきた廃業することによるデメリットの多くを無くすことができます。
第三者承継により従業員の仕事を残すことができるという点や、取引先への影響が小さくなるといった点は十分なメリットとなるでしょう。
また、M&Aや外部から招聘した人へ事業承継する場合には、広く優秀な人材を探して事業を託すことができるという点もメリットです。
さらにM&Aでは会社の売却によって大きな利益を得られる可能性もあります。
もちろん売却益がどの程度かというのは相手次第になりますし、その辺りの交渉によってはなかなか成約できないという事もあるため一概に良いとは言い切れませんが、廃業する前に第三者承継の道を探すだけの魅力はあるはずです。
早めの準備・相談を!
事業の後継者探しは既に後継者が決まっているケースでも説得に3年前後かかったなんて話もよくあります。
場合によってはもっと長期的な説得や育成が必要になるはずで、どうしても後継者探しには時間がかかるものです。
親族や幹部へ引き継ぐケースだけでなく、M&Aについても相手の企業がすぐに見つかるとは限りませんから準備は早いに越したことはありません。
早めに行動することができればM&Aに向けて事業の再編を行うといった余裕もできてきます。
まとめ
日本の、特に中小企業では経営の後継者不足による廃業が本当に深刻なレベルになっています。
なんの対策もしなければ次々と廃業していくことになるのは明白で、対策にはどうしても時間がかかってしまいます。
廃業が増えてしまうのは日本全体の大きな問題ですので、なるべく廃業は避けて何らかの形で継続できる道を探すべきです。
M&Aを検討してもまず何から始めればいいのかもわからない……という中小企業のオーナーのために、事業承継のコンサルティングを行っている会社があります。
不安の多い初めての事業承継でも、実績のあるプロによるサポートがあれば安心です。
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