2023.06.23
財産承継
土地評価額の計算方法|路線価・倍率・実勢価格に分けて解説
土地評価額とは、土地の売買価格や課税価格の基準となる価格です。土地の評価額と言っても絶対的な指標があるわけではなく、いくつかの種類があり、それぞれ意味するものが異なります。

土地活用方法の見直しや土地の相続に際して、自分が所有している土地の価値を知りたいと考えている方も多いことでしょう。ただ、土地評価額を参考に自分で調べようとしても、税や不動産に関する専門知識がないと、どの指標が適切なのか判断がつきません。

この記事では、土地評価額を算出する主な指標や評価額の具体的な計算方法、土地評価額を扱うにあたって気を付けておきたいポイントなどについて、詳しく解説します。
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土地評価額とは

土地の価格や課税額の目安を知るために参考になるのが、土地評価額です、土地評価額は、公的機関が決定する土地の価値の指標をもとに調べることができます。

国土交通省のホームページで公開されている「公示価格」「実勢価格」「路線価」に加えて、固定資産保有者に送付する納税通知書に記載された「固定資産税評価額」も土地評価額の指標の1つです。

この中でも路線価から、相続税や贈与税の算定に必要な相続税評価額の目安を計算できます。ここでは、4つの土地評価額の概要を解説します。

実勢価格

「実勢価格」は、時価とほぼ同じ意味の言葉であり、実際の不動産取引で売買された価格のことを指します。決まった金額はなく、売り手と買い手の話し合いで価格が変動するのが実勢価格の特徴です。例えば、売りに出している土地になかなか買い手が見つからなければ、その土地に興味を持つ人が見つかりやすくするために売り手は売値を相場よりも下げることがあります。反対に、希少性が高い土地であれば、一般的な土地価格の相場よりも高値で買い手を見つけることも可能です。こうした流れで、実勢価格は決まります。
そのため、実勢価格は価格帯の幅が大きい場合があります。実際の売買では、不動産が一物一価であることや、当事者の事情や希望を踏まえて取引価格が変動するため、不動産の市況によって相場や公示価格よりも高い・安い金額で売買することになるケースも少なくありません。なお、土地の実勢価格は、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」から検索することできます。

公示価格

公示価格とは、国土交通省の土地鑑定委員会が公表する土地(標準地)の価格です。一般の土地取引価格の指標としての役割を持ち、土地売買の際に適正価格を知るために役立つ指標とされています。なお、公示価格は、「公示地価」「地価公示価格」「公的土地価格」とも呼ばれることもありますが、全て意味は同じです。
公示価格は、鑑定評価員(不動産鑑定士)が地価公示法に基づいて毎年1月1日時点の1平メートルあたりの評価額を算出し、3月中旬に結果が公表されます。公示価格を知りたい場合は、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」で検索することが可能です。公示価格が公表されていない土地・地域の場合は、都道府県による基準地価格が用いられます。また、公示価格は土地の相続税路線価や固定資産税評価額を決める際の基準としても活用されています。

路線価

路線価とは、道路に割り振られた土地の価格です。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があり、単に路線価と言うと「相続税路線価」を意味している場合が多くなっています。相続税路線価は、相続や贈与で不動産を取得した際の評価額の算定基準です。
相続税路線価は、土地全体ではなく路線(道路)に面した宅地1平方メートルあたりの価格をもとに算出されます。ただし、路線価がそのまま相続税路線価となるわけではありません。路線価をもとに計算する場合、土地の広さや形状などを考慮して相続税評価額が決まります。そのため、路線価から計算する相続税評価額は、一般的に実勢価格より低くなる傾向がみられます。
相続税路線価は固定ではなく、毎年更新されるものです。土地の売買の実勢価格や公示地価、不動産鑑定士による鑑定評価額などの要素を考慮して決定され、1月1日時点での価格がその年の7月に発表されます。路線価は、国税庁が公表する「路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。
一方、固定資産税路線価は、固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産取得税などの算出に必要な固定資産税評価額を求めるための価格です。不動産鑑定士等が、鑑定・評価した特定の土地を基準に、市町村が評価額を算出します。固定資産税は、各市町村が固定資産税評価額から算出し、不動産の所有者に通知されます。

固定資産税評価額

土地や住宅などの不動産を所有すると、固定資産税を支払うことになります。その固定資産税の金額を決めるために用いられるのが「固定資産税評価額」です。固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している土地や家屋に対して課税されます。
固定資産税評価額は、土地やその上に建っている家屋の資産価値の評価軸を定めた「固定資産評価基準」から算出されます。例えば、宅地についての固定資産税評価額は公示価格の約70%で、立地や面積、形状などによって評価額が変わる仕組みです。なお、固定資産税評価額は3年に1回「評価替え(評価額の見直し)」が行われ、その結果が固定資産課税台帳に記載されます。
固定資産税評価額は、市町村から送られてくる固定資産税の納税通知書によって確認することが可能です。あるいは、役所で固定資産台帳を閲覧したり、固定資産評価証明書を発行したりする方法もあります。

土地評価額の計算方法は2種類

相続税評価額の計算方法には、「路線価方式」「倍率方式」があります。いずれも計算式が単純なうえに計算に必要な情報も比較的容易に取得できます。路線価方式と倍率方式の計算方法について詳しくみていきましょう。

路線価方式の土地評価額計算方法

路線価方式とは、毎年7月に国税庁が公表する路線価に評価対象の土地面積を乗じて算出する方式です。税理士が正確な価格を調べる際は、以下で説明するよりも細かい規定のもとで計算しますが、ここでは個人が土地評価額の目安を算出できるよう簡易的な方法を紹介します。

計算に必要な項目と調べ方

路線価方式の計算には、次の項目が必要です。
 

・土地の面積(地積)
不動産が所在する住所区分(番地・号など)の地積は、固定資産税の納税通知書に記載されています。毎年6月中旬頃(東京23区の場合は6月1日)に送られてくるため、紛失しないように注意が必要です。相続税評価上は、実際の土地の面積を計算するため、同じ番地や号に複数の不動産がある場合は、納税通知書に記載された地積よりも小さい数値になります。


・持分割合
土地を他の相続人と共有している場合、自身の持分割合の確認が必要です。法務局で取得する登記簿謄本(登記事項証明書)から、持分割合を確認できます。


・路線価図
国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率表」で路線価を確認可能です。都道府県を選択→路線価図を選択→市区町村を選択→路線価図の順に選択すると、道路1本ずつに1平方メートルあたりの路線価が記された地図が表示されます。

路線価は「200D」のような数字とアルファベットで記載されています。数字は千円単位の表示になっているため、200Dの場合の路線価は20万円です。 アルファベットのA~Gは借地権割合を指します。借地権割合は地域によって異なり、30~90%の間で定められています。

計算方法

路線価方式の基本的な計算式は以下のとおりです。

「路線価×地積×持分」

例えば、路線価20万円、面積300平方メートル、持分割合1/1の場合は、次のように計算します。
20万円×300平方メートル×1/1=6,000万円

持分割合1/2の場合は以下のように計算します。
20万円×300平方メートル×1/2=3,000万円

倍率方式の土地評価額計算方法

倍率方式とは、固定資産税評価額に倍率を乗じて算出する方式です。路線価が設定されていない土地の価格を計算する際に用います。土地評価額は土地を相続する際の参考になるため、計算に必要な項目と計算方法について詳しくみていきましょう。

計算に必要な項目

倍率方式の計算には次の情報が必要です。

・固定資産税評価額
市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。見直しは3年に1回と決まっており、次回は2024年、2027年に見直されます。

・登記簿謄本
土地を共有している場合は、法務局などで登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、持分割合を確認してください。

・倍率表
国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率」の都道府県と市・区を選択すると、ページ上部に表示される「この市区町村の評価倍率表を見る」から確認可能です。
倍率は、市街化調整区域や農用地区域といった区分別に記載されています。倍率は1.1か1.2が一般的です。調べたい土地がどの区分なのかは、自治体の都市計画課で確認してください。

計算方法

倍率方式の計算式は以下のとおりです。
「固定資産税評価額×持分割合×倍率」

例えば、固定資産税評価額1000万円、持分1/2、倍率1.1の場合は、次のように算出します。
1000万円×1/2×1.1 = 550万円

貸付不動産の土地評価額

アパートやマンション、ガレージなどの形で貸し出している不動産は、相続税評価額が減額されます。「貸家建付地」と「貸宅地」の2種類があります。それぞれ詳しくみていきましょう。

貸家建付地

建物付きの土地であるアパートやマンションなどは「貸家建付地」に該当し、次のように算出します。 「評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額」 路線価は数字とアルファベットのA~Gで表示されており、このアルファベットが借地権割合を指します。アルファベット別の借地権割合は次のとおりです。

  • A……90%
  • B……80%
  • C……70%
  • D……60%
  • E……50%
  • F……40%
  • G……30%

例えば、路線価方式・倍率方式で算出した評価額が3,000万円で借地権割合が90%、賃貸割合が80%の場合は以下のように算出します。
3,000万円×(1−90%×30%×80%)=2,352万円

貸宅地

貸しているのが土地のみの場合、「貸宅地」に該当します。計算式は以下のとおりです。
「路線価方式・倍率方式で算出した評価額×(1-借地権割合)」

例えば、路線価方式・倍率方式で算出した評価額が3,000万円で借地権割合が70%の場合、以下のように算出します。
3,000万円×(1-70%)=900万円

実勢価格の計算方法

土地を相続するか売却するか迷う場合は、実勢価格の目安を計算することが重要です。実勢価格は一般的に公示価格の1.1〜1.2倍が目安とされる場合が多く、人気の土地の実勢価格は公示価格の1.5倍以上になることもあります。実勢価格が公示価格の1.1倍だとした場合、次のように計算できます。
「公示価格×面積×1.1」
公示価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べることができます。トップページの「地価の情報をご覧になりたい方へ」の「データの検索」をクリックし、地域や用途区分、年度などの必要事項を入力してください。検索結果画面の「価格(円/㎡)」の欄に表示されている価格が公示価格です。
例えば、実勢価格が公示価格の1.1倍又は、1.2倍だとした場合、公示価格が7.2万円で面積が200平方メートルの土地の実勢価格は、以下のように算出します。
7.2万円×200平方メートル×1.1 or 1.2=1,584万円or 1,728万円
実勢価格が相続税評価額を大きく上回る場合は、実勢価格について専門家に計算を依頼することも1つの方法です。
 

土地評価額の落とし穴

土地評価額は、相続税や固定資産税など各種税金と密接に関連しています。そのため、土地評価額とそれに関連するものについてしっかり知っておかないと、金銭的に不利な状況に直面するかもしれません。そこでこちらでは、土地評価額を扱う中ではまりやすい落とし穴について解説していきます。

土地の用途によって固定資産税の額が変わる

不動産登記事務取扱手続準則により、土地は用途ごとに地目が設定されています。法で定められている地目は、宅地や田、畑などをはじめとする23種類です。しかし、固定資産税や相続税の財産評価で使われる地目は「実際にどのように使われているか」が判断基準となっており、登記の地目とは異なる場合があります。固定資産税や相続税の評価額の決定にあたって使われる地目は、宅地、田、畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雑種地の9種類です。

雑種地とは、「宅地」や「田」のように用途が定まっておらず、いずれの地目にもあてはまらない土地のことを指します。この雑種地は、扱い次第で税金が増えたり減ったりするため、慎重に対応しなければなりません。

例えば固定資産税評価額の場合、その雑種地と似ている雑種地が他にあり、売買されていればその価格が評価額の目安になるでしょう。売買の実例がない場合は、その雑種地の位置や利用状況、付近の土地の価格から評価額目安を算出することも可能です。例えば、雑種地の隣に宅地があれば宅地に、農地が隣にあれば農地に比準して評価するという流れになります。

宅地の場合、固定資産税評価額は一般的に【公示価格×0.7】の式で簡易的に算出可能です。一方、農地は宅地よりも収益性が低く、一般的に固定資産税評価額は宅地よりもかなり低くなります。もし雑種地が宅地として評価された場合、宅地とほぼ同等の固定資産税がかかってしまうでしょう。

固定資産税にかかわる地目は、市区町村の役所が財産の現状を調査して判断します。調査は3年に1度実施され、その結果をもとに評価額が決まります。ただ、市区町村によって評価基準は異なります。こうした背景から、自分の想像よりも高い固定資産税が課される可能性があることを、理解しておいた方がいいでしょう。

相続では土地だけでなく家屋(建物)も課税対象

土地を建物込みで相続した場合は、土地評価額に加えて家屋(建物)の評価額に対しても相続税が発生します。家屋の評価額は、倍率方式の土地評価と同様に固定資産税評価額をもとに算出される仕組みです。対象となる家屋が生前に住居や事務所として本人が使用していた場合は、以下の計算式で相続税の評価額を求めることができます。

【固定資産税評価額×1.0】

建物込みで相続する場合は、土地評価額と家屋の固定資産税評価額の両方を算出した上で相続税を計算する必要があるので、注意しなければなりません。

土地の形や立地も評価額に影響する

土地の価値は、形状や立地などの条件が大きく影響します。例えば、間口が狭く奥行きが長い土地は使い勝手が悪いため、評価額は下がる傾向にあります。同様に、きれいな四角形ではない「不整形地」も、宅地として利用がしにくいので評価額は低めです。また、土地の一部が斜面になっている「がけ地」や、線路や踏切に隣接している土地なども、通常の評価額から減額できる可能性があります。

正確な土地評価額を把握するには?

自分が土地を相続するといった状況に直面した場合、その土地評価額はどれくらいなのかできるだけ信頼できる数字を知っておきたいもの。では、正確な土地評価額を把握するにはどうすればいいのでしょうか。

公的機関が発表するデータを調べる

これまでご説明した通り土地の評価額にはさまざまな指標がありますが、その指標についてそれぞれ各公的機関が情報を提供しています。例えば、公示価格と実勢価格であれば、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」から検索することが可能です。同様に、相続税評価額であれば国税庁がWebで公表する「財産評価基準書」から確認でき、固定資産税評価額の場合は「全国地価マップ」を活用して調べることができます。

専門家に相談する

土地評価額は、公的機関の情報を通じて自分で調べることはできます。ただ、税や不動産に関する知識がないと、せっかく情報を得ても正しく扱うことができないかもしれません。より正確に土地評価額を算出したいのであれば、不動産取引の専門家や、財産・相続分野のコンサルタントなどの専門家に相談すると確実です。

まとめ

土地評価額には、実勢価格や公示価格などさまざまな指標があります。目的によって参考にすべき評価額は変わるので、それぞれの指標の意味と使う目的をしっかり理解しておくことが大切です。

土地評価額の情報は、インターネットなどから容易に取得できる上に、計算方法もシンプルです。土地の価格を調べる際には大いに役立ちます。ただし、公示価格や路線価などは実勢価格と乖離しているケースがあるため、土地を相続するか売却するか迷う場合は、実勢価格の目安を算出するようにしましょう。

また、相続後にアパート・マンション経営などの土地活用を検討している場合は、評価額以外の要素も含めて慎重に検討することをおすすめします。

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