2024.06.10
健康
「心」と「体」の健康セミナー
食が変われば、人生も変わる ~食べて、飲んで、ベターエイジング~
青山財産ネットワークスは、創業以来、総合財産コンサルティングの提供を通じ、主に「財産」面での支援に注力してまいりました。 
一方、人生100年時代を幸せに過ごすためには、同時に健康な「心」と「体」も大切であると考えており、 専門家をお招きしてセミナーを開催しています。 

本年6月、「食が変われば、人生も変わる」をテーマに行ったオンラインセミナーより、内容を一部抜粋してお届けします。 
今回お招きした講師は、マブチメディカルクリニック院長、学校法人食糧学院学院長の馬渕知子先生です。身体をつくり、健康を保つために必要な「タンパク質」「脂質」「コラーゲン」などについて解説いただきました。




ゲスト講師プロフィール
馬渕 知子 氏
マブチメディカルクリニック院長
学校法人 食糧学院 学院長
(顔写真)   ゲスト講師プロフィール
馬渕 知子 氏
マブチメディカルクリニック院長
学校法人 食糧学院 学院長
-シニアプライベートバンカー
・経歴
2003年東京医科大学医学部医学科卒業後、同院に勤務。2008年にマブチメディカルクリニックを開設し、院長となる。2011年には福岡県大任町の健康大使に就任。同年、学校法人食糧学院理事に就任し、現在は学院長を務めている。

専門分野は内科学、皮膚科学だが、あらゆる科と提携を結び、AKB48の専属ドクターを始め幅広い層に向けて、人間の体を総合的にサポートする医療を推進している。
「PON!」や「林修の今でしょ!講座」、「この差って何ですか?」、「めざましテレビ」「バイキング」「ノンストップ」などのメディアに多数出演し、多くの著書や講演会で活躍中。

私は日頃多くの患者さんに接していますが、「この人は元気だな」と思う方には共通点があります。5つの要素――「食事」「動く」「(人・社会と)繋がる」「笑う」「休む」をうまく回せている方はとても健康で楽しそうです。



この中でも最も大切なのは「食事」であると、私は考えています。人は口から入る物によってつくられ、生かされています。そのため、いかに自分に合う食べ物を摂るかが重要です。
皆さんにしっかりと摂取していただきたい成分、食材をご紹介していきます。

タンパク質は、身体をつくり、免疫力を強化する

まず、しっかり摂れているかどうか確認していただきたいのが「タンパク質」です。

タンパク質は私たちの身体をつくる一番大切な材料です。脳や筋肉をはじめ、さまざまな臓器がタンパク質を基盤につくられています。 

臓器は一生ものではありません。臓器によっては一生使われる細胞もありますが、古くなったり硬くなったり病気になったりした細胞は壊され、新しい細胞にどんどん入れ替わっていきます。そのため、材料をしっかり摂れていないと、身体はやがてむしばまれます。

例えば「骨」。骨の成分のうち、タンパク質は30%を占めています。骨も約6ヵ月で入れ替わっているため、材料が不足していると骨粗鬆症につながります。

また、タンパク質は、免疫力も左右します。免疫とは、ウイルスや細菌などの異物から身体を守る防御システムです。年齢を重ねるうちに免疫力は低下していきますので、日頃から免疫力を高めることを心がけていきたいものです。

一言に「免疫」と言っても、2段階に分かれます。第1段階は「粘膜免疫」です。
簡単に言うと、バリア機能のようなものです。身体に害を及ぼす菌やウイルス、あるいは花粉は、目・鼻・口・脳・お腹などの粘膜を通過して体内に侵入し、感染して病気を引き起こします。そのため、粘膜で侵入を防げば感染を防げます。

実は粘膜の約7割はタンパク質からできています。粘膜を丈夫にするためにはタンパク質と、ビタミンAの摂取が必要です。
食事では、緑黄色野菜などに多く含まれる「β-カロテン」をしっかり摂ることをお勧めします。

ただし、粘膜を強化しても侵入してしまう菌・ウイルスもあります。また、がん細胞のように体内で発症する病もあります。これらと闘ってくれるのが第2段階の免疫は「全身免疫」です。ここで活躍するのが「免疫細胞」という菌やウイルスに立ち向かう武器・兵隊のようなものです。この免疫細胞もタンパク質でできているため、摂取することで全身免疫にもつながるのです。

老化予防、むくみ・冷えの解消、意欲向上、精神安定にもタンパク質が必要

体内の水分量にも、タンパク質が関係しています。 生まれたとき、人の身体の約80%は水です。しかし、年を取るごとに水分が少なくなっていき、老化が進むため体内に水分を保持するためにはタンパク質が必要となります。
実は、一番水分を保有しているのは筋肉です。体内の水分を減らさないために、タンパク質を摂取して、筋肉を維持することが重要です。

また、血液中の水分を維持するためにもタンパク質が必要です。
血液中のタンパク質は「アルブミン」と呼ばれ、血液の外と中の水分量の調整に役立っています。血液中に十分にアルブミンがあれば、血液中の水をうまく循環させられるのですが、これが少ないとむくみの原因となります。
むくみが気になる方は、タンパク質がしっかり摂れているかどうかを確認してみてください。

タンパク質は「エネルギー」、「熱」をつくることもできます。
冷え性に悩んでいる方は、実はタンパク質不足かもしれません。例えば、サラダをメインに食べる人とお肉をメインで食べる人は体温に差があることがデータで示されています。タンパク質を消化するときには、熱を生み出します。
しっかりタンパク質を摂ることで、体温を上げ、エネルギーを燃やすことができます。

タンパク質は、他にもいろいろなところで活躍しています。
「やる気ホルモン」と言われるノルアドレナリンやドーパミン、「脳の安定剤」と言われるセロトニン、メラトニンがあります。この中のメラトニンは良質な睡眠をとるためにも必要な成分です。これらも全て材料はタンパク質です。
「やる気を出そう」「幸せになりたい」「心地よく眠りたい」と思うなら、タンパク質は欠かせません。また、腸内環境を整えるためにも必要です。

タンパク質の摂取目安は体重1kgあたり1g以上

では、タンパク質をどれくらい摂ればよいのでしょうか。
国が提示している目安量としては、体重1kg あたり1 g 以上のタンパク質の摂取を推奨しています。私の見解では、健康な方は1.2g程度摂取している方が多いように思います。
60~70代になると、タンパク質の消化吸収能力は7割程度に減ると言われていますので、通常よりもたくさん摂ることを意識するといいでしょう。

どんな人でも、最低で1日に50gのタンパク質を摂る必要があると言われています。妊婦さんや病気を患っている方はさらに必要です。



お肉の場合、部位にもよりますが100gも食べれば大体20gタンパク質を摂取できます。また、卵も非常に優れたタンパク源です。
おすすめの卵の食べ方は「温泉卵」です。白身の部分にはタンパク質の分解を阻害する酵素が含まれていて、タンパク質の吸収を妨げることがあります。少し加熱すればその酵素がなくなるため、白身には少し熱を入れ、黄身は生や半熟に近い状態で食べるのがよいでしょう。

魚であれば、一切れで20gほどのタンパク質が摂れます。牛乳・チーズ・ヨーグルトといった乳製品、豆腐・納豆など大豆製品も優れたタンパク源です。

「EPA」「DHA」など、良質な脂質の摂取も重要

次に、積極的に摂取していただきたいのが「良質な脂質」です。脂も身体をつくるための大切な材料です。

脂質異常症の方向けの、コレステロールをつくらないようにする薬の処方箋を見ると、副作用の症状の中に「脱力感」「勃起不全」「筋力低下」など男性機能・女性機能の低下の原因となるような症状が記載されていることがあります。その理由の一つとして、男性ホルモン・女性ホルモンの材料がコレステロールだからだとも考えられています。

脳神経や身体の神経にも非常に多くのコレステロールが使われています。
頭は「水と脂の塊」と言われています。そのため、脂質の生合成に関係するような薬を服用していると、神経痛が出る方もいらっしゃいます。皮膚のほか多様なところで使われている脂は、適度に摂取する必要があるのです。

特にしっかりと摂っていただきたい脂質が「EPA(エイコサペンタエン酸)」「DHA(ドコサヘキサエン酸)」です。
この2つは皆さんもよく耳にすると思いますが、どのように効果が発見されたかをご紹介します。

「EPA」は、血液・血管の健康維持のために重要です。
発見のきっかけは、氷雪地帯で暮らすイヌイット人の食生活でした。野菜や果物が育たたない土地なのでアザラシの肉を主食としているのですが、欧米諸国の人々より心臓・血管系の病気が少ないのです。
イワシを大量に食べるアザラシの血肉には、イワシの成分が大量に含まれています。そこからイワシに含まれるEPAが注目され、効能が明らかになりました。

「DHA」が注目されたのは1989年頃。全世界の子どもの知能指数を調べたところ、日本人が非常に高いことが分かりました。
日本の子どもと世界の子どもの違いは、魚を食べている量でした。それを機に、「DHA」が脳の発達・機能維持に重要な役割を果たしていることが導き出されたのです。



EPA・DHAともに、青魚に多く含まれています。サバやサンマは半身~1尾、マグロの中トロ・大トロの厚切りなら2・3切れ食べれば十分だと言われています。
1日1回は青魚をメインにする食習慣をつけると良いのではないでしょうか。

骨・関節、皮膚・粘膜を強くするためには「コラーゲン」を

ぜひ摂取していただきたい3つ目の成分は「コラーゲン」です。美容目的で摂取するイメージをもたれていますが、実は身体をつくる重要な材料です。

コラーゲンは医学的に「結合組織」に必要とされます。つまり、いろいろな細胞を結合させる材料なのです。例えば個人認証に使われる血管は、あちこちに動いたりしません。また、内臓は、飛び跳ねても崩れることはありませんし、髪の毛は頭皮に付いています。これらは「結合組織」の働きによるものです。

他にも、コラーゲンは骨・関節、皮膚・粘膜に使われています。皮膚に関しては約70%を占めます。

骨・関節を強くするため、カルシウムやマグネシウムの摂取を心がけている方は多いようです。しかしこれらはコラーゲンがなければ身になりません。
骨をよく覗いて見てみると、コラーゲンのネットのようなものがあり、そこにカルシウムとかマグネシウムが組み込まれていきます。
骨にしっかりコラーゲンがないと、栄養素が入っていかず、丈夫で柔軟性のある骨ができないのです。

関節も同様です。皆さん、コンドロイチン・ヒアルロン酸・グルコサミンなどのサプリを飲まれたりしていますが、やはりコラーゲンと共にあることで意味をなすのです。もちろん、皮膚を美しく若々しく保ちたい方にもコラーゲンは重要です。

コラーゲンも一生ものではなく、不要になったり古くなったりすると常に入れ替わります。
しっかり摂っていないと、至る所に支障が出てきてしまいます。コラーゲンもタンパク質に該当しますが、コラーゲンはコラーゲンとして捉え摂取した方が、材料としてよりよく体内で活用されると言われています。ぜひ積極的に摂取を心がけてください。

コラーゲンは、肉類・魚類の「皮」に多く含まれます。なるべく皮ごと食べると良いです。
特にコラーゲンが豊富なのは「フカヒレ」「ウナギ」「スッポン」などです。これらは高級食材ですが、手軽に摂るのであれば、「しらす(じゃこ)」などの皮ごと食べられる小魚類や手羽先・牛スジなどもお勧めです。
食べ物から摂りにくければ、サプリメントで補給してもいいと思います。

なお、コラーゲンを摂取する際には、「鉄」「ビタミンC」も一緒に摂るようにしてください。
コラーゲンは3本のタンパク質の糸が絡み合って形成されるのですが、合成の際に鉄とビタミンCが必要です。特に、身体をどこかにぶつけるとアザができやすい方は、コラーゲン不足で血管が弱くなっており、ちょっとした刺激で内出血を起こしやすくなっている可能性があります。
これらの摂取を心がけてみてください。

抗酸化力が高い食材は「デキる秘書」

「抗酸化力」が高い食材も、積極的な摂取をお勧めします。「デキる秘書」のように、身体をうまくサポートしてくれている、非常に大切な成分です。

人は「酸化(さびる)」から免れられない生き物です。
私たちが酸素を吸うと、大体2~3%が「活性酸素」に変わります。響きの良い言葉ですが、実は狂暴な性質があります。通常は菌やウイルスを殺す、がん細胞を排除するなどして役立っているのですが、増えすぎたりうまく消去できなかったりすると、正常な細胞もどんどん傷つけていき万病の元になります。酸化を防ぐ対策は非常に重要です。

なお、「糖化」にも注意が必要です。
糖化とは簡単に言えば、たんぱく質と結合した糖質が加熱や刺激により変化し、糖質が焦げ付くイメージです。たとえば、砂糖や白い食パンを加熱すると茶色く変わりますが、これが糖化であり、人間の身体の中でも同じ反応が起きることが分かっています。
食事で摂った糖分は血液中に吸収されて使われますが、糖分を摂りすぎてしまうと一部は肝臓に蓄積され、余分な糖は血液を回ります。その間にタンパク質と結びつき、さまざまな反応によって糖化を起こし、血管などをむしばんでいきます。

一番分かりやすいのが糖尿病です。糖尿病だけならそれほど悪いことではないのですが、腎臓機能の低下や失明など、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。食生活や運動により、糖分コントロールを心がけてください。
しかしながら、逆に、あまり糖を減らしすぎると、血糖値が下がった状態が長くなり、筋力に問題が生じたり認知症にも関係することが分かっています。
人によって摂取するべき量は異なりますので、自身の適正な数値を見つけ出すことが重要です。

最後に、「抗酸化」加えてがん予防などに効果的と言われる野菜は、「にんにく」を筆頭に、「キャベツ」「大豆」「ショウガ」「ニンジン」などが挙げられています。意識的に食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

最期まで楽しく美しく健康を維持するため、日頃の食生活について見直すきっかけになれば幸いです。