2024.07.23
市況・トレンド
近年の路線価上昇と、将来を見据えた財産防衛策

令和6年度分の路線価が発表

国税庁が7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる令和6年度分の路線価(1月1日時点)を公表しました。全国の標準宅地は3年連続での上昇となりました。上昇率は2.3%となり2010年以降で最大です。

Afterコロナといわれるように世界的な経済活動の立ち直りや、日本国内の都心部を中心とした再開発、都心や一部の地方のインバウンド需要が上昇を引き上げる要因となりました。

不動産は一物一価と言われるように個別性が高いですが、外部要因(周辺環境や人口推移)の影響も受けやすい性質を持ちます。都心のように再開発で人も企業も、観光客も集まるエリアの不動産では、国内外からの力強いニーズが価格を下支えしています。


国税庁資料より作成

全国の路線価推移

全国47都道府県のうち、路線価が上昇したのは29都道府県(昨年比4県増加)です。

上昇率のTOP10には、福岡県、沖縄県、北海道、愛知県、大阪府等の地方主要都市、そして東京都で構成されています。最も上昇率が大きかったのは福岡県で5.8%です。(昨年は北海道)この結果からも地方都市の経済の立ち直りや観光スポットの高騰が見て取れます。

地方都市の上昇に負けず劣らずの東京都は5.3%と福岡県と沖縄県に次ぐ3番目の上昇率で、全国平均を押し上げています。路線価価格の全国トップは39年連続で銀座の鳩居堂前となり、1㎡あたり4,424万円でした。

円安や人口減少、更には相次ぐ増税・課税強化など日本を取り巻く環境は厳しさを増していく様相ですが、都心や一部の地方の不動産市況は活況で高値推移しており、それを反映するように全国的に路線価が上昇しています

こうした背景には、不動産と負動産と呼ばれるように不動産価値の2極化が進んでいることが挙げられます。

一部の地方都市では、観光や海外企業の進出による恩恵を受けることが出来ていますが、大半の地方不動産は現在や将来価値の下落が予想され、私達のお客様の中にも、そのような地方の不動産を処分されて、売却して換金した資金を都心の不動産や金融資産で運用を行う組み換えを実行されている方がいらっしゃいます。

加えて、過去のリーマンショックにより苦い経験をした投資家や金融機関も、借入には慎重な姿勢であること、金融市場が好調なことで、インフレに強い不動産へ組み換えようと常に物色を続けている富裕層も増加していることがあります。

そのため、今後も全国平均では、不動産価格の上昇・下落局面が予想されますが、立地に優れた不動産については保有時も売却時も負けにくい状況が続くと予想します。将来的な金利の上昇や、世界規模での災害・事件はいつ起こるかわかりませんが、そうした事象による影響は短期的なもので、中・長期的な視点でとらえれば、地方主要都市並びに都心の不動産については、時価・路線価は高値で推移していくと考えられます。

まとめ

今回発表された路線価では、標準宅地の評価基準額の対前年変動率の全国平均が3年連続して上昇し、上昇率も2010年以降で最大となりました。

路線価が変動することで保有している不動産の相続税評価額も毎年変動しますが、首都圏において大半の路線価は継続的に上昇しています。路線価が上昇すれば、資産価値が増える一方で、相続税の負担額も増える結果となります。

特に資産に対して不動産の割合の高い土地持ち資産家にとっては、土地の相続税評価が上昇することが相続税額の負担の増加に直結します。そのため、過去に試算をしてご自身の相続税額等を把握している方も、毎年の路線価発表を契機にして財産評価をあらためて行い、ご自身の財産の状態を分析・把握することが推奨されます。

また、相続税評価額の更新と合わせて、個人や法人の資金の流れを分析検証することも重要です。相続税のみならず、法人税や所得税を含めた財産全体を分析し、個人・法人のキャッシュフローを含めた財産全体の将来予測を行うことで課題を見える化し、不動産・保険・金融資産・借入等、財産全体を見渡しながら、必要な対策を実行して頂ければと考えております。

財産全体のポートフォリオの見直し(メンテナンス)を毎年行うことで、「5つの視点」から最適な相続対策が可能となり、それが次世代へ財産をより多く承継させることのできる一番安全な、かつ近道の方法となるでしょう。
*5つの視点とは当社が定義している「円満な経営承継」「円満な財産承継」「納税資金の確保」「財産の運用保全」「まさかへの備え」の総称です。

監修者

       青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士
  青山財産ネットワークス
財産コンサルタント 相澤 光
-1級ファイナンシャル・プランニング技能士
-シニア・プライベートバンカー
-公認不動産コンサルティングマスター
-宅地建物取引士
・経歴
不動産や信託の活用を軸とした永続型の財産承継コンサルティングを現場の最前線で行っている。節税目的の相続対策に警鐘を鳴らし、「財産全体が最適」となる承継・管理・運用を土台とするファミリーコンサルティングを幅広く手掛ける。ナレッジを集約した書籍を発行。セミナー登壇実績多数。YouTubeにて動画コンテンツも配信中。

・著書
青山財産ネットワークスの30年に渡るノウハウをまとめた『「5つの視点」で資産と想いを遺す~人生100年時代の相続対策』を執筆。2021年(11月15日-11月21日)紀伊国屋書店新宿本店 ビジネス書ランキング 第1位

※役職名、内容等は2024年7月時点のものです。


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