2024.09.20
事業承継
株式等保有特定会社とは?定義や評価方法について解説
他の会社を子会社化するための持株会社や、グループ内の資産を運用することを目的とした資産管理会社は、「株式等保有特定会社」に該当するケースがあります。株式等保有特定会社は株価の評価方法が異なるため、税金の計算をする際には注意が必要です。

そこでこちらの記事では、株式等保有特定会社の概要や、株価の評価方法、注意点などについて解説していきます。

株式等保有特定会社とは?

株式等保有特定会社は、一般的な事業会社などとは異なる性質を持っている会社です。では、具体的にはどのような性質の会社なのでしょうか。

こちらの項目では、まずは株式等保有特定会社への理解を深めるため、株式等保有特定会社と判定される基準や株式等保有特定会社に該当する具体的な会社について解説していきます。

 

株式等保有特定会社の判定基準

株式等保有特定会社とは、保有する総資産の50%以上が「株式等」に該当するものである会社のことを指す言葉です。たとえば、他の会社を支配(子会社化)するために設立された持株会社は、基本的に傘下となる会社の株式の大部分を保有しています。そのため、株式等保有特定会社扱いになるケースが目立ちます。

なお、資産にはさまざまな種類がありますが、「株式等」に含まれるものの代表例は以下のとおりです。

  • 証券会社が保有する商品としての株式
  • 外国株式
  • 株式制のゴルフ会員権
  • 出資金
  • 新株予約権付社債



なお、株式等と混同しやすい資産もいくつかあります。以下の資産については株式等には該当しませんので、注意が必要です。

  • 匿名組合の出資証
  • 券投資信託の受益証券



また、会社が以下のいずれかに当てはまる場合は、株式等保有特定会社とは判定されません。

  • 開業から3年未満である
  • 休業中である
  • 清算中である
  • 土地保有特定会社である

どのような会社が株式等保有特定会社に該当する?

保有している資産のうち50%以上を株式等が占めている会社は、株式を保有することそのものが事業の目的と考えられます。そのため、本業となる事業によって利益を得ようとする一般的な事業会社とは、分けて考える必要があります。

実際に株式等保有特定会社と判定される可能性が高いのは、グループ全体の運営・管理を担う「持株会社」や、株式や不動産などの所有者がその資産を所有・管理することを目的に設立された「資産管理会社」などです。


株式等保有特定会社の株価の評価方法


株式等保有特定会社には、株価に関して明確な指標がありません。相続や贈与の場合は、財産評価基本通達の定めに従って株価を評価します。原則として純資産価額方式により評価しますが、「S1+S2方式」により評価することも可能です。

ここでは、株式等保有特定会社の株価の主な評価方法である「純資産価額方式」と「S1+S2方式」という2つの方式について、具体的に解説していきます。


株価の評価とは?

株式には、東京証券取引所などに上場している「上場株式」と、上場していない「非上場株式」の2つの種類があります。

上場企業の株式は、取引所における売買を通じて株価が決まりますが、その一方で非上場企業の場合は市場で取引されているわけではないので、明確な株価は存在しません。そのため、経営者が所有している株式は、事業承継などを通じて後継者に引き継ぐにあたり、相続税や贈与税を申告・納税のために客観的な評価方法で株式の評価額を算出する必要性が生じます。

評価には複数の方法があり、評価の方法によって最終的な税負担は変わります。


純資産価額方式

株式等保有特定会社の判定を受けた場合は、原則として「純資産価額方式」によって株価の計算を実施することになります。純資産価額方式とは、1株あたりの純資産価額を求める方法です。時価純資産の額を発行されている株式の総数で割ることで、算出できます。評価に含み損益を反映する方法であるため、非上場会社の場合も株式市場の本来の価値に近い評価になりやすいことが特徴です。

純資産価額方式では、含み益のある資産が多いほど純資産価額は上がり、株価も高くなります。なお、株価が高く評価されると、事業承継や相続が発生した際などに、支払う税金の額が多くなります。この点については、あらかじめ理解しておいたほうがいいでしょう。

<純資産価額方式の計算式>
(総資産の時価―負債価額―法人税相当額)÷発行済株式総数=純資産価額

S1+S2方式

「S1+S2方式」とは、会社が保有する資産を、不動産や設備、商品在庫といった株式等以外の資産(S1)と株式等(S2)に分けて、株価の評価を行う方法です。

S2に関しては、対象となる資産は株式等のため、原則通りその株式等の評価額を純資産価額方式によって算出します。一方、S1ではその株式等を除いて一般の評価会社として評価を行います。従って会社の規模に応じて「類似業種比準方式」という計算方法を選択することが可能です。

類似業種比準方式は、自社と類似する業種の上場企業の株価を基準に評価する方法であり、配当金額と利益金額、純資産価額が評価額の算出に用いられます。類似業種比準方式は、実際の上場企業の株価を参考に評価するため、実際の価値に近い評価額を算出できることが特徴です。S1とS2を算出したら、それら2つを合算します。対象となる会社の発行済株式総数で割ることで、一株あたりの評価額が算出されます。

<類似業種比準方式の計算式>
類似業種の株価 ×(1株当たりの配当金額÷課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額+1株当たりの利益金額÷課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額+1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)÷課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額))÷3 × 勘酌率(調整率)

類似業種は、類似業種株価等通達に定める業種目の区分に則って判定します。業種目の区分は、総務省が公表している「日本標準産業分類」に準拠して決められます。勘酌率(調整率)は会社の規模によって変わり、大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5です。

含み益のある株式を多数保有している場合は、純資産価額の占める割合が高いため、「S1+S2方式」は純資産価額法よりも評価額が低くなる傾向があります。


株式等保有特定会社のデメリット


株式等保有特定会社という判定を受けた場合、評価方式を任意で選べないため株価の評価が高くなる可能性があります。そのため、事業承継などを前提とした評価においては基本的にメリットがありません。

株式等保有特定会社に該当しない会社では、株価の評価方法について、「純資産価額方式」に加えて「類似業種比準方式」も使えます。しかし、株式等保有特定会社の評価方法は、原則として純資産価額方式です。純資産価額方式で計算した場合は、株式の評価額が高くなりやすいという傾向があります。そして、株式の評価額は、相続税や贈与税に大きく影響する要素です。

このように株式等保有特定会社は、株式の評価額が高くなる可能性があるでしょう。しかし、保有株式の減少や子会社の評価の見直し、株式以外の資産の増加などを行うことで、株式等保有特定会社の条件から外れることもあります。こうした取り組みは「株特外し」と呼ばれています。 

株式等保有特定会社に関する取り組みの注意点

株価の評価が低くなれば、相続税などの額も小さくなります。ただ、相続などに向けてできるだけ株価を抑える取り組みを行っても、税務調査によって、そうした取り組みによる株価の変動が「なかったもの」として判定されるリスクがあります。

そのため、株式等保有特定会社に関する取り組みは、自力で解決しようとせず、事業承継や相続に精通した専門家に相談するのがおすすめです。


まとめ

株式等保有特定会社とは、資産の50%以上を株式等が占める会社のことです。株式等保有特定会社に該当する会社とそうではない会社とでは、株価の評価方法が変わります。そのため、会社の事業承継を行う場合、株式等保有特定会社に該当していると税金が高くなる可能性があります。

ただし、株式等保有特定会社の節税目的での資産の変動は、不合理な「株特外し(株式等保有特定会社の条件から外れること)」として課税庁からペナルティを与えられる可能性がある点には要注意です。自社にとって適切な資産運用を行うためにも、事業承継や相続に関する業務の専門家に相談することをおすすめします。


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