2024.10.10
事業承継
事業承継ファンドを活用した企業のスリム化と承継の成功 
顧客情報:出版・印刷業界
営業利益:マイナス0.5億
提供サービス:事業承継ファンド
今回、ご紹介するのは、老舗出版社のオーナー経営者であるY様の事例。長年にわたり経営をしてきましたが、業界全体の不況やデジタル化の波に乗り遅れたこともあり赤字続きの状態に陥っていました。さらに次世代  を任せられる人材がいないということもあり、将来に不安を抱えていました。

このような状況でご相談頂き、当社のサービスである「事業承継ファンド」を活用して企業のスリム化および事業承継を成功させた事例をご紹介します。事業採算の見直しや過剰資産 の見直し、退職従業員の支援策など、事業承継ファンドを活用した結果、どのようにして苦しい経営状況から活路を見出していったのか、解説していきます。

 
目次
1.赤字が続く出版社における事業承継の道のり
 1-1.経営改善に向けた事業の整理と保有資産の見直し
2.財務体質の改善と従業員の幸せの実現
 2-1.退職者のサポート
3.課題を解決したうえで次世代に引き継ぐサポート
 3-1.株式の買受けと経営参加
 3-2.経営改善と財務体質強化
 3-3.従業員の再配置と支援
 3-4.M&Aによる事業承継
 課題 
  • 赤字が続く中、次世代を担ってくれる方が社内にはいない
  • M&Aを試行するも買い手との価格差が埋まらない状況下で、
    どのように承継先を探すか
 提案
  • 事業のスリム化による損益の改善
  • 資産圧縮による財務体質の改善
  • 不動産の売却収入による退職従業員への手当て
  • スリム化の先にあるM&Aの成功 

赤字が続く出版社における事業承継の道のり


当初Y様は、年齢のこともあり事業承継をどこかのタイミングで検討されていました。

しかし、次世代に託そうにも、赤字が続いている中、この逆境を乗り越えられる人が社内にはいないという状況。当社にご相談頂く前には、M&Aの会社にも相談されていましたが、赤字であることや、保有している不動産が一等地にあることから値段が高くなってしまい、買い手が見つかりませんでした。

そこで当社は、5つの視点を用いて現状分析を行い、事業別の損益を把握、事業立て直しの可能性の模索、資金繰りの試算、廃業の場合のコストの見積などを実施  しました。そして、次のようなご提案をさせていただきました。

経営改善に向けた事業の整理と保有資産の見直し

①事業の整理

雑誌や書籍のタイトルを絞り込み、不採算なものからは撤退するというご提案をしました。特に、将来性のないタイトルや売上が低迷している雑誌は廃刊し、利益を出しているタイトルやセグメントにリソースを集中させることにしました。

②過大な資産の売却

今となっては広すぎる本社やスタジオを売却して、適正規模の場所を借り、経費削減と資金の確保を行いました。売却した資金は、借入金の返済や従業員への割増退職金の支払いに充てました。

③電子書籍化の推進

同社はデジタル化の波に乗り遅れていたため、電子書籍化への投資を増加させました。これにより、新たな収益源を確保でき、デジタル市場での競争力を向上させることに成功しました。

当初は廃業も視野に入れていましたが、その必要性はなくなり、事業の継続へ向けた大きな1歩となりました。

財務体質の改善と従業員の幸せの実現

これらの施策を実施したことで、損益をほぼトントンの状態に持ち直すことに成功し、かつ借入金の返済が進んで財務体質が改善しました。この時点で再びM&Aの仲介会社を通じて、承継先を探す準備を始めました。

M&Aでは、隣接業種の企業が同社の引き継ぎに名乗りを上げました。この企業は出版業以外にも事業を展開しており、同社のコンテンツや市場価値に高い関心を持っていたそうです。 最終的に同社は、持続可能な形で事業を続けることができ、Y様からは「やっと肩の荷が下りた」と安堵の言葉をいただき、大変嬉しく思いました。

退職者のサポート

事業整理に伴い、退職する従業員には転職支援や割増退職金を提供し、再出発をサポートしました。編集者やライターは雑誌制作に情熱を注いでいましたが、経営が厳しい同社の環境で働き続けることは最適な選択肢とは言えませんでした。そのため、彼らのキャリアや人生が良い方向に進むことを重視した支援をいたしました。

「眠れない日々が続いた」とおっしゃるY様からは安堵の表情が垣間見えたのが印象的でした。

中小企業にとっては、経営者の高齢化や後継者の不在、経営不振などによって事業承継が困難になることが少なくありません。事業承継ファンドは、こうした企業の株式を引き受けて経営の再建や事業の承継を支援することで、企業の持続的な発展を目指しています。

課題を解決したうえで次世代に引き継ぐサポート 

当社の「事業承継ファンド」は、経営者が自社の事業を次世代に引き継ぐ際の課題解決をサポートするサービスです。多角的な視点から企業ごとに適切な施策を実施しています。

株式の買受けと経営参加

事業承継ファンドでは、対象企業の株式を買い受けることで経営に直接参加する方式をとります。企業が事業継続や事業承継をするにあたって抱える問題を、現経営者に代わって解決することが可能です。

経営改善と財務体質強化

コスト削減や事業の整理、余剰資産の売却などを通じて企業の財務体質を強化することも事業承継ファンドの役割といえます。また、業績不振の原因となっている問題を企業様の代わりに洗い出し、解決策を講じることで企業様の収益力を向上させることも大切な役割のひとつです。

従業員の再配置と支援

企業の再建にあたっては、従業員の雇用に配慮することも重要です。当ファンドでは、必要に応じて従業員の再配置や転職支援を行い、従業員が新たな環境で活躍できるようサポートします。また、リストラが避けられない場合でも、割増退職金の支払いなどを通じて従業員の生活を支援できるようにフォローさせていただきます。

M&Aによる事業承継

最終的な目標は、事業を適切な方に引き継ぐことに他なりません。当ファンドでは引き継ぎやすい状態にするための施策を講じたうえで、多くはM&Aを通じて承継者を探します。事業の継続性を確保し、役職員が安心して次のステージに進めるように尽力させていただきます。


当社では、企業存続に悩む方や事業承継を考えている方が第一歩を踏み出せるためのサポートを行いますので、まずはお悩みをご相談ください。

担当コンサルタント

島根 伸治(公認会計士)
取締役執行役員 事業承継アドバイザリー・ファンド事業部長

大手監査法人、メーカーを経て2001年当社グループに入社。
多くの企業オーナー様と会社の将来について話し、長きにわたり財務・資本政策や事業承継のご支援を実施。経済ショックや自然災害なども多発する今の成熟社会においては、必ずしも「成長」でなく、「縮小均衡」させて承継を図ることも有用と実感している。
他社様と「縮小型」の事業承継ファンドを運営し、株主となってご支援する例もある。

※役職名、内容等は2024年10月時点のものです。

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