2024.04.16
事業承継
青山ファミリーオフィスサービス始動から3年。一族の在り方・将来を支える人にも着目した支援により、「承継」から「永続」へ
青山財産ネットワークスは2021年1月、株式会社青山ファミリーオフィスサービス(AFOS)を設立し、ファミリーオフィスサービスを開始しました。

ファミリービジネス(=同族企業)の永続的発展に向け、事業を支える一族の一体性維持・強化を支援する、「非財産」分野のコンサルティングサービスです。

スタートから3年、多くのご相談に対応して実績を積み、知見を磨き続けています。
現在の取り組み、「財産のプロフェッショナル」×「非財産のプロフェッショナル」の連携によって課題解決に導いた事例をご紹介します。

一族経営の課題の解決へ、「ファミリーガバナンス」の構築・運用を支援



青山財産ネットワークスでは、長年にわたり財産・事業承継に関わるコンサルティングを手がけてきましたが、青山ファミリーオフィスサービス(以下、AFOS)の設立により、お客様により幅広いサービスをご提供できるようになりました。

AFOSが対応しているお悩みやご要望として、例えば次のようなものが挙げられます。

  • 事業に関与している一族と関与していない一族の一体性、求心力を維持していきたい
  • 3世代目に入り、仕事も住む場所もバラバラになりつつある一族がうまくまとまれるようにしたい
  • 社長1人に株を集約することで起きる弊害を懸念している
  • いずれ株式を承継する子どもたちに、株主としての役割を果たすために必要な心得や知識を身に付けさせたい
  • 財産承継に重点をおいた事業承継コンサルティングでは解決できない問題があると感じている
  • 創業から現在に至るまでの道のりを記録に残し、成功体験も苦難の乗り越え方も先の世代へ伝えたい
このような悩みやご要望にお応えするために、青山財産ネットワークスでは、財産承継に関するご支援と「ファミリーガバナンス」の構築・運用を組み合わせてご提供しています。

ガバナンスとは一般的に「統治」「管理」の体制を意味しますが、ファミリービジネスの所有者(=支配株主)である一族を対象とするものを「ファミリーガバナンス」と呼んでいます。 ファミリーガバナンスを整備する手法には、次のようなものがあります。

●家族憲章

一族のルールを記載した文書。守るべき一族の理念・価値観・使命、地域社会への貢献の在り方、一族事業に係る株式承継の規定、一族事業への就業方針などを盛り込みます。

●一族会議体

一族とファミリービジネスに関する報告や意思決定、利害対立の調整、交流などを行う一族の集いです。一族の会議体を継続的に運用し、新しい一族メンバーにも常に共有する役割を担います。

●ファミリーオフィス

家族憲章や一族会議体を実効性のある仕組みとして機能させるための組織です。一族の持つあらゆる資産を管理・運用・承継し、財産のみならず非財産の面からも企画・運営し、一族を支援します。

ファミリーガバナンスの作成は、単なるルール作りではありません。「なぜこれまで一族で運営してきたのか」「なぜこれからも一族で運営していくのか」など、根幹にある想いを一族に残していくことが重要であると、私たちは考えています。

その考えに共感いただいたお客様から、支援のご依頼をいただき、一緒にファミリーガバナンスの構築に取り組み、運用に伴走しています。

財産と非財産を統合した承継支援ニーズが高まるなか、金融機関にもノウハウを提供

財産と非財産を統合した事業承継支援のニーズが高まるなか、ファミリーオフィスサービスを提供する企業が増えてきています。
いち早くサービスを立ち上げた私たちは、先行して実績を積み重ねていると自負しています。その信頼から、金融機関からお客様をご紹介いただいたり、ご相談をいただいたりすることも増えてきました。

例えば、金融機関のお客様向けのセミナー開催、銀行の行員・店長クラスを対象とした研修、次世代経営者向けの勉強会などの活動を行っています。

金融機関の皆様も、承継時期に差しかかった企業の親子間コミュニケーションや、この先の兄弟・親族のつながりに対し、課題意識を強めていると感じます。
こうした課題に取り組む皆さんと連携し、ソリューションの提供にも力を入れております。
 

「財産のプロ」×「非財産のプロ」の連携によるソリューション事例

青山財産ネットワークスの「財産のプロフェッショナル」と、AFOSの「非財産のプロフェッショナル」の連携によって、ファミリービジネスの課題を解決した事例をご紹介します。

<CASE-1>「株を1人に所有させるか、3人に所有させるか」

財産領域のコンサルタントが支援を行う企業オーナー・Aさん(60代)。3人のお子さんは全員が自社に入社し、それぞれの強みを活かして活躍しています。承継に向け、「誰にどのくらいの財産を渡すのか」「承継時の納税資金をどのように作っておくか」といった対策をお手伝いしていました。しかし、ある悩みについて、なかなか答えが見つからなかったのです。

「長男だけに株を所有させるのか。もしくは兄弟3人ともに株を所有させるのか」

金融機関の担当者や税理士などは「もめ事の種になるので、株は長男に集約させた方がよい」と口を揃えます。しかし、Aさんには、「子ども3人とその家族を等しく大切にしたい」「子ども3人で力を合わせて会社を運営していってほしい」という思いがありました。誰か1人に株を集約させた場合、自分が亡きあと協調性を保っていけるのか、さらに孫の世代になったら……そんな迷いから、手を付けられずにいたのです。

そこでAFOSで非財産領域を専門とするコンサルタントが加わり、最適な方法を探りました。

株を1人に所有させるメリット・リスク、3人で株を所有させるメリット・リスクを整理。それらを踏まえ、自分たちにもっとも適している承継の在り方は「一族皆で一体性を持って承継していく」スタイルだと考え、3人に株を所有させることを決意されました。

3人で所有した場合に発生し得る問題については、実際に起きた場合の対処法、難しい意思決定をする際の判断基準などについて話し合い、「家族憲章」を策定。ファミリーガバナンスを構築したのです。

<CASE-2>「株式の分散はリスク、集約はコスト負担大」

Bさん(50代)のケースも、Aさんとほぼ同じ流れで、財産+非財産のコンサルタントが協力して支援を行いました。Aさんと異なるのは、「バトンを渡す側が2名いる」という点です。

Bさんは弟とともに起業して30年。力を合わせて会社を成長させ、報酬も平等、株式も半分ずつ所有しています。お互いの子どもたちはすでに成人しており、事業承継を考えるようになったとき、こんな不安を抱えました。

「将来的に株式が分散してしまうことはリスクになるが、集約するには大きなコストがかかる。集約するとしても、誰に集約すればよいのか」

悩んだ結果、やはりコスト面で「集約」は現実的ではないと判断。株式を集団で承継する道を選びました。そして、「集団で承継することに伴うリスクを極力減らす」「むしろその強みを引き出せるように準備をすればよい」という考えに至り、ファミリーガバナンスを整備し、一族会議体を運営していくことにしました。また、2家で株式を承継するための財産の保有形態についても、プランニングを行っていきます。

AさんもBさんも、ファミリーガバナンスというリスク回避策を講じたうえで、「集約」ではなく「複数・集団」での株式保有を選択しました。
この選択には、もう一つのメリットがあります。

株を1人に集約してしまうと、この先、その家系から後継者を選ばざるを得ません。しかし、その後継者が十分な経営能力を備えているとはかぎりません。その点、株を保有しながら会社を支えてくれる家系が複数あれば、人材のプールが大きくなり、後継者の選択肢を増やすことができます。これにより、ファミリービジネスの永続性が高まることが期待できます。

私たちは、「今の会社、そして将来の会社を支えていく人は誰なのか」という議論を重視し、承継スタイルの選択やファミリーガバナンスの構築・運用に伴走しています。

そして、あくまで「中立的な第三者」という立場を大切に守っています。仲の良い親子・兄弟であっても、やはり利害関係は存在し、相手と比較して損得を感じたりすると、感情的になってしまうこともあるものです。家族の間に立ち、冷静かつフラットな議論の場を運営できること、家族間・一族間のコミュニケーション機会を増やせることが、私たちの介在価値であると考えています。

監修者


松川 洋平
コンサルティング第二事業本部 第一事業部 部長


大手税理士法人での税務申告業務・相続事業承継コンサルティング業務を経て、2018年に青山財産ネットワークスに入社。 事業承継を専門とし、上場企業から中小企業まで企業オーナー向けのコンサルティングに従事。



川口 和貴
コンサルティング第二事業本部 第一事業部 AFOSグループ グループ長


金融機関勤務後、2016年に青山財産ネットワークスに入社し、事業承継コンサルティングに従事。2021年の青山ファミリーオフィスサービスに立ち上げから関与し、現在ファミリーガバナンス分野のコンサルティングを中心に提供している。

※役職名、内容等は取材時のものです。

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